歴史 気になる事柄を学ぶシリーズ 神話・伝説

103 伝説のチームを紹介する試み 四霊(しれい)編④ 霊亀

ごきげんよう、ハゲと天パです。

「伝説のチームを紹介する試み」。
古代中国や漢字文化圏でおめでたいときに現れるというレアアニマル、瑞獣。
その代表的な4種「四霊」を紹介しています。

今回は四霊編ラスト、霊亀です。


四霊(しれい、Siling)は、「礼記」礼運篇に記される霊妙な四種の瑞獣のことをいい、四瑞(しずい)とも呼ばれます。
彼らは、この世の動物達の長だと考えられた特別な4つの瑞獣。
そのメンバーは、麟(りん、麒麟)・鳳(ほう、鳳凰)・亀(き、霊亀)・竜(りゅう、応竜)を言います。

万物は木火土金水の5種類の元素からなるという説、
五行思想(ごぎょうしそう)または五行説(ごぎょうせつ)により、
動物は、鱗(魚と爬虫類)、羽(鳥)、裸(ヒト)、毛(獣)、介(カメ、甲殻類と貝類)の5つに分類。
「五虫」とされます。

たびたびの説明ですが、この「虫」は現代のムシとは意味が異なり、
生物全般を示す「蠱」を簡略化したもの。
それぞれの長を四霊が担い、

鱗蟲の長:応竜(おうりゅう)
羽蟲の長:鳳凰(ほうおう)
毛蟲の長:麒麟(きりん)
介蟲の長:霊亀(れいき)

という感じ。
なお、ヒトは「裸虫」というんだとか。

ちなみに五行説に照らし合わせると、
鱗→木・羽→火・裸→土・毛→金・介→水
の属性をそれぞれ持っています。

四霊






霊亀

甲羅を持つ生き物の王と蓬莱山。

そんな介蟲(甲虫)の長、霊亀。
四霊の一角にして、中国神話に登場する巨大な亀。
その大きさは小さな大陸に等しく、背中の甲羅の上に「蓬萊山(ほうらいざん)」と呼ばれる山を背負っているとのことです。

東洋の神話等においては、亀は千年以上生きると強大な霊力を発揮しするとされ、未来の吉凶を予知出来たとのこと。
霊亀も千年以上を生きた亀が強大な霊力を得た事で変異・キョダイマックス化したものと言われています。


そんな霊亀が甲羅に背負っている蓬莱山は、
古代中国で東の海上(海中)にある、不老不死となった仙人が住む山で「仙境」の一つ。
「山海経」の「海内北経」によると、
「蓬萊山は海中にあり、大人の市は海中にあり」と記されています。※「市」とは蜃気楼のこと。


ちなみに、仙人が住むといわれていた山は蓬萊の他に、
「方丈」(ほうじょう)・「瀛洲」(えいしゅう)・「岱輿」(たいよ)・「員嶠」(いんきょう)があり、五神山と呼ばれます。
ただし、「岱輿」及び「員嶠」は流れて消えてしまったらしく、蓬萊・方丈・瀛洲を「東方の三神山」と呼ぶそうです。
蓬莱は渤海湾に面した山東半島のはるか東方の海にある島、または台湾を指すとされており、
方丈は東方絶海の中央にあるとされる島、瀛洲はのちに日本のことなんだとか。

日本では、「丹後国風土記」にて「蓬山」と書いて「とこよのくに」と読み、
文脈にも神仙などの用語が出てくることや他の常世国伝承にも不老不死など神仙思想の影響が窺えることから、
理想郷の伝承として海神宮などと習合したとかんがえられているんだそうです。
「竹取物語」では「東の海に蓬萊という山あるなり」と記され。
求婚者の一人の車持皇子が「蓬萊の玉の枝」を採ってこいと無理ゲーを押し付けられます。

また、富士山のことを指すという説も生まれ、謡曲の一つ「富士山」には、
「然れば本号は不死山なりしを。郡の名に寄せて。富士の山とは申すなり。是蓬萊の。仙境たり」ともあります。

なお蓬莱山、日本庭園では、「行き来できない島」を指すそうで、英語では「トレジャーマウンテン」または「トレジャーアイランド」と訳されることがよくあるんだとか。
ワクワクすっぞ。


霊亀

実際の亀。


そんな仙人が住む島を背負った巨大ガメ、霊亀ですが、そもそも亀は、

爬虫綱カメ目(Testudines)に分類される生物の総称。
カメ目は、多様な爬虫類グループの中でも比較的早期の約2億1000万年前(中生代三畳紀後期)に出現。

甲羅を本格的に発達させたヤツらで、水・陸の両域で現代も多様性を維持しているグループです。

上記の通り、胴がはっきりした甲羅を構成する点が最大の特徴。
内部は脊椎骨、肩胛骨、肋骨、胸骨などが互いに密着して箱のような構造をなし、また外側ではブロック状に並んだ板によって外見的な甲羅が形成されます。

甲羅は腹面、背面、側面で閉鎖され、前側の窓から頭部と前足、後ろ側の窓から後ろ足と尾が出るわけですが、
四肢帯が肋骨に囲まれているのは脊椎動物では他になく、現生爬虫類のなかでももっとも特殊化した形態です。


頭や尾を甲羅にしまっちゃうので、頭からしっぽの先までの体長や全長を測ることが難しく、甲羅の直線距離(背甲長もしくは甲長)で大きさを表すのも亀ならでは。

現生の最大種はオサガメで最大甲長約200cm、重さ900kg以上、
最小種はシモフリヒラセリクガメで最大甲長9.6センチメートルだそうですが、
絶滅種には全長4mに及ぶウミガメであるアーケロン(Archelon spp.。最大甲長1.9m。中生代白亜紀、米国)や、
最大甲長でそれを上回る淡水棲ヨコクビガメ類のスチュペンデミス・ゲオグラフィクス(Stupendemys geographicus。全長約4m、新生代中新世、ベネズエラ)などの大型種も存在したそうです。


現生種では化石種と比較して甲板が薄く軽量化、甲板数も少ない傾向があり、例外もあるが陸棲傾向の強い種では甲板が分厚く背甲がドーム状に盛り上がり、水棲傾向の強い種では水の抵抗を減らすため甲板が薄く背甲が扁平になる傾向があるそうです。


カメ類は動物の中でも長寿の代表格とされますが、これは細胞の代謝のサイクルが遅いため。 

確実な長寿記録としては、1766年にセーシェルからモーリシャスに持ち込まれ、1918年に死亡したアルダブラゾウガメの「マリオンのゾウガメ」152年の飼育記録があります。
他にもギリシャリクガメのティモシーは、1855年-2004年にかけて149年、カロリナハコガメで138年、ヨーロッパヌマガメで120年という記録があるそうです。

また、信憑性は微妙ですが、 1835年にダーウィンによって採集され2006年に死亡したサンタクルスゾウガメのハリエット175年の飼育記録があるそうです。
ただし、ハリエットはダーウィンが上陸しなかった島に分布するサンタクルスゾウガメであることが判明したため人違いならぬ亀違いの可能性もあるんだとか。

また、インドコルカタのアリポーア動物園で2006年に死亡したアルダブラゾウガメのアドワイチャは1750年生まれとされ、255年の飼育記録があるとも。
まあ、昔のことなので生年の確固たる証拠はないようですが、動物園の記録によると150年以上生きたことが確実だそうです。

霊亀

伝説における亀。


亀は古来から中国やインドでは神獣として扱われ、中国文化の影響下にあった地域では吉兆とされています。
地域や民族によっては信仰の対象とされ、
脚の長い亀に蛇が巻き付いた姿、もしくは尾が蛇となっている姿で描かれる玄武は、
「四神」の一つであり、五行の水に対応し北方を守護、また四季の冬を象徴しているとされました。

ちなみにウチの霊亀さんは、玄武ちゃんの師匠という位置づけです。

玄武&霊亀



また、古代中国ではカメの甲羅を用いて神託の儀式を行っていました。
これを「亀卜(きぼく)」といい、カメの甲羅に熱を加えて、生じたヒビの形状を見て吉凶を判断する占いの一種。

紀元前3000年頃-紀元前2000年頃の新石器時代後期の龍山文化が発祥と推定され、その後の殷の時代にも盛んに行われていたそうです。
そして、占いの結果などを彫り込んだのが甲骨文字で漢字のルーツです。


インドでは、宇宙観に亀が登場。
バラモン教では、世界は3頭の巨象に支えられ、その巨象たちは1頭の大亀に支えられ、大亀は超巨大な大蛇の上に乗っているそうです。

また、ヒンドゥー教の時代、
維持神ヴィシュヌへの信仰が盛んになると、
だいたい「実はヴィシュヌの化身です。」というロジックが働き、
上記の大亀もヴィシュヌの化身「大亀クールマ」であるとされました。

私達が住む世界はマンダラ山という山なんですが、
ある時、大蛇ヴァースキによって海底に沈められそうになって大ピンチ。
そんなとき、ヴィシュヌが大亀クールマの姿となって山を背に乗せたので、世界は救われ、保たれることになったといいます。

また、クールマより古い亀の王アクーパーラも同様にマンダラ山を支える偉大な大亀だそうで、基本的に世界は亀の背中の上です。


ギリシャ神話でも変身譚の一つとしてケローネーの物語があります。
ケローネーは精霊ニュンペーの一人で、ゼウスとヘーラーとの結婚式を馬鹿にして出席しなかったことから神々の怒りを買い、ヘルメースによって亀の姿に変えられます。
「ケローネー」(Chelone)はギリシャ語で「亀」を意味する言葉になったそうです。


日本では「鶴は千年 亀は万年」と言われ、鶴とともに亀は長寿の象徴とされます。
また、「浦島太郎」の原典の一つにおいて、
浦島太郎が老人になったのちも乙姫(亀姫)が太郎を慕い続けて添い遂げ、
やがて太郎は鶴に、乙姫は亀に化身したというというものがあるそうで鶴と亀は夫婦円満の象徴とされるそうです

また、甲羅に緑藻類がついたカメのことのことを、背中に蓑を羽織ったように見えることに由来し「蓑亀」とよび、中国や日本では長寿を象徴する縁起のよいものとして珍重されています。






そんなわけで、お送りしてきた四霊編ラスト、霊亀(というか、亀)の紹介でした。
亀は、鈍重なもの、歩みの遅いものの象徴のようにも扱われますが、
その一方で、堅い守りや、遅くても着実に進む様子、そこから転じて実直さや勤勉さなど肯定的なたとえでもおなじみ。

その安定感から世界を支える存在とされた亀さん、渋いですね。


次回も古代中国の伝説に登場する奴らを紹介するシリーズ。
今度は悪い奴らサイドです。
なんだかんだいって、悪いヤツのほうが描いてて楽しいのはなぜでしょう。

次回もよろしくお願いします。






なお、このブログは、気になったことを調べ、学んだ内容とイラストを紹介するお絵描きブログです。
ソースは主にWikipediaなどになりますので、学術研究ではなくエンターテイメントとしてお楽しみください。
興味のきっかけや、ふんわりしたイメージ掴みのお手伝いになればうれしいです。


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