歴史 気になる事柄を学ぶシリーズ 神話・伝説

104 伝説のチームを紹介する試み 蚩尤と四凶(しきょう)編① 蚩尤(しゆう)

伝説のチームを紹介する試み、新シリーズ。

今回扱うチームは中国神話の悪神たち、いわゆる「四凶」。
ですが、四凶の面々の前に、中国神話における最初の悪役「蚩尤(しゆう)」を紹介します。
そんなわけで「蚩尤と四凶編」スタートです。
まあ、一つ言えることとして、ぜんぜんチームではないな・・・

中国最初の反逆者 蚩尤




中国神話は、口伝、寓話、儀式、舞踏、戯曲、書物といった形で残された伝説・歴史・信仰の集合体。
主に黄河の下流域にある黄河文明・中原の歴史と神話ですが、その他に存在した長江文明、遼河文明や、少数民族の神話も含まれます。

古国時代とも呼ばれる「夏」朝以前の歴史の一部を伝えたり、
神話によっては文化ごとの歴史的特色や狩猟生活から農耕へ移行したことを伝える資料でもあります。

主な構成としては、
1.天地開闢の時代、世界のはじまり系
2.伝説の帝王の偉業系(三皇五帝)
3.仙人すげえな系
4.その他(織姫と彦星とか)


という感じ。
今回紹介する蚩尤は、世界ができて、伝説の帝王たちの時代。
中国最初の帝王「黄帝」を倒して王座を奪うことを企んだヤツです。

蚩尤

黄帝とは。


早く蚩尤の説明に行きたいところですが、
黄帝についても触れときたいところ。正直黄帝があっての蚩尤なので。

黄帝は三皇五帝の一人。
蚩尤を討って三皇の治世を継ぎ、五帝の最初の帝になりました。
「史記」では、従わない者を次々に討って道を開き、後の春秋戦国時代に「中国」とされる領域をすみずみまで統治したので「開国の帝王」として描かれています。

また「史記」五帝本紀や「国語」晋語によると、姫水のほとりに生まれたことに因んで姓は姫姓、氏は軒轅(けんえん)氏、または帝鴻氏とも呼ばれるそうです。

その本来は雷神であるそうですが、
「軒轅」が龍蛇形の星座を指す場合もあったり、「山海経」では、黄帝の子孫が住む「軒轅国」の住民は人の顔に体がヘビだそうで、伝説でも龍との関係が深く、黄帝は龍蛇の神だったのでは?とも考えられているそうです。

また、彼以降の4人の五帝や、夏・殷・周・秦の始祖、また多くの諸侯が黄帝の子孫であるとされ、現在も多くの漢民族は黄帝を先祖に仰いでいるそうです。

やっとこさ蚩尤について紹介。
蚩尤(しゆう、拼音: Chīyóu)は、中国神話に登場する神。
「路史」では姓は姜で炎帝神農氏の子孫であるとされます。

獣身で、銅の頭に鉄の額を持つという姿。
また、四目六臂で人の身体に牛の頭と鳥の蹄を持つ、頭に角があるなどといわれたり、8本の足を持つとも。

「述異記」によると石や鉄を食べ、超能力を持ち、性格は勇敢で忍耐強いとのこと。
同じ姿をした魔神のような兄弟が81人(魚龍河図)いたといいます。※述異記によると72人 。
兄弟めっちゃ多いな。

「書経」では性格は邪悪。
その凶暴・貪欲さはフクロウにたとえて表現され「反乱」というものをはじめて行った存在として挙げられているんだとか。

「史記」の封禅書では蚩尤は八神のうちの「兵主神」に相当するとされ、戦の神と考えられています。
戦争で必要となる戦斧、楯、弓矢など優れた武器を発明、あるいはそれらに金属を用いた最初が蚩尤なんだとか。
蚩尤が発明した武器としては、
「世本」では、戈(か)・矛(ぼう)・戟(げき)・酋矛(しゅうぼう)・夷矛(いぼう)の五兵(5つの兵器)を、「龍魚河図」では兵杖・戟・刀・大弩が蚩尤の発明品として挙げられています。

蚩尤が反乱を起こしたことで、これ以降は法を定めて反乱を抑えなければいけなくなったとか。


蚩尤

黄帝との戦い。


神農氏の世の末期、諸侯が互いに侵略しあって世の中が乱れます。

蚩尤はその中でもひときわ強大で、古代中国の王座を奪うという野望を持ち、
81人の兄弟の他に無数の魑魅魍魎や、
風神の風伯と雨神の雨師という天候の神様を味方にして、風・雨・煙・霧などを巻き起こして黄帝と涿鹿の野で戦いました。(涿鹿の戦い

濃霧を起こして視界を悪くしたり魑魅魍魎たちを駆使して黄帝の軍勢を苦しめますが、黄帝は霧の中でも方位を示すアイテム「指南車」を使って霧を突破し、妖怪たちが恐れる龍の鳴き声に似た音を角笛などを使って響かせてひるませ、軍を押し進めて遂に蚩尤を倒します。

なお、指南車とは、
左右の車輪の回転の差から機械的機構により方位を特定する仕組みの便利アイテム。
車の向きが変わっても、内部のからくりにより上に乗っている仙人の人形が一定の方向を示すもののようで、
その原理は、現代でも「差動歯車」として自動車などに使われています。


また、「山海経」大荒北経では、応竜が黄帝に加勢して蚩尤を倒したとされています。

応龍VS蚩尤

ちなみに、応龍はこのときの殺生で徳ポイントを失くしたので天に上れなくなり、中国南部に引っ越しました。
そして長い年月を経て黄龍ちゃんになったのでした。

黄龍になった応龍ちゃん


最後に捕らえられた蚩尤は、逃亡を恐れて枷をつけられたまま殺され、体を二つに分けて封印。
身体から滴り落ちた鮮血で赤く染まった枷は、その後 楓 となり、
毎年秋になると赤く染まるのは、蚩尤の血に染められた恨みが宿っているからだという、まさかの怖い話。

また、赤い色は蚩尤を示すともされ、赤旗を「蚩尤旗」と言います。
黄帝は蚩尤征伐後はそのすがたを描いた旗を示してその威勢の象徴ともしたそうです。


ちなみに、古代中国の鼎(かなえ)には、怪物のような顔が文様として描かれており、
これは四凶の一人、饕餮(とうてつ)を示したものとされることが多いですが、
一説には、これは蚩尤のものであり、黄帝によって討たれた蚩尤の首をあらわしているとされているんだとか。
饕餮自体、切り落とされた蚩尤の首から生まれたという話もあり、蚩尤と饕餮を同一視することもあるそうです。

スーパーくいしん坊 饕餮(とうてつ)
蚩尤

九黎族と三苗。


蚩尤に味方したのは勇敢で戦の上手い九黎で、
黎氏は大きく分けて9つの民族なので「九黎」。
さらに小さく分けると81の氏族があったといわれ、彼らを束ねる頭目が蚩尤。

このことから、81人(もしくは72人)兄弟という伝説が生まれたと考えられます。
九黎族は戦いに敗れますが、黄帝は敵討ちを心配して彼らを皆殺しにしようとしますが根絶やしにはできず、九黎の一族から分かれて生き残ったのが三苗(三苗人)。
後に彼らは歴代の王を執拗に悩ます手強い敵となったそうです。

この「三苗」、三つの氏の苗裔(子孫)たちという意味であるともされ、
帝鴻氏の渾敦(こんとん)・少昊氏の窮奇(きゅうき)・縉雲氏の饕餮(とうてつ)を指すともされます。
この三人に、もう一人の檮杌(とうごつ)が四凶なのです。


そんなわけで、次回からは四凶のメンバーを紹介していきますので、
よろしくお願いします。


なお、このブログは、気になったことを調べ、学んだ内容とイラストを紹介するお絵描きブログです。
ソースは主にWikipediaなどになりますので、学術研究ではなくエンターテイメントとしてお楽しみください。
興味のきっかけや、ふんわりしたイメージ掴みのお手伝いになればうれしいです。


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