75 伝説のチームを紹介する試み七福神⑥福禄寿・寿老人

伝説のチームを紹介する試み、
福の神のドリームチーム七福神編。
今回は、
子孫繁栄・健康長寿の神様福禄寿、
長寿延命・諸病平癒の神様寿老人の紹介です。

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七福神は日本において民間で信仰されている福徳の神の集まりです。
一般的には、

大黒天
恵比寿
毘沙門天
弁財天
福禄寿
寿老人
布袋尊

とされており、
インド、中国、日本とそれぞれの国から集まった国際的なグループです。
七柱の面々はそれぞれがヒンドゥー教、仏教、道教、神道といったルーツを持っていているわけですが、
独自にいろいろな要素が習合したり変化したりして今の形になっているのが面白いところ。

今回は福禄寿と寿老人。
ともに七福神の一角に数えられますが、
この2人は実はルーツが同じで同一人物とされることも多々あるため、
一緒に紹介します。
正直、どっちもおじいですんで。

福禄寿、寿老人いずれも道教の神様　
南極老人星の化身である「南極老人」といわれています。

●2人はカノープス（南極老人星）

福禄寿

南極老人！

寿老人

カノープス！

まずは、二人組ユニット、
「南極老人カノープス」について。

福禄寿はその名の通り、
福禄と長寿をもたらす神様。
その姿は短身に長頭。
経巻を結びつけた杖を持っており、鶴がいっしょにいます。

寿老人は日本では、
白鬚明神ともされることがあり、
白ひげを垂らし、長頭。
これまた巻物をつけた杖を持ち、
鹿を連れています。

上記の通り、いずれも南極老人星の化身、
2人が合体することでおそらく、
南極老人にパワーアップします。
多分！

●南極老人星（カノープス）について

2人のルーツ、南極老人星についても詳しく見ていきます。

中国の俗信では、
戦争や騒乱時にはこの星は見えず、天下が泰平になると見える。
とあり、
縁起の良い「死兆星」のような感じです。

この星が現れると人々は競って幸福と長寿を祈ったそうです。

福禄寿

カノープスってどんな星？

この星はカノープス（Canopus）という星で、りゅうこつ座のα星。

りゅうこつ座を構成する星の中で最も明るい恒星になります。
全天で21個ある一等星の1つであり、
太陽を除けば、おおいぬ座のシリウスに次いで地球から見える星の中で2番目に明るい星だそうです。

ちなみに地球からみえる明るい恒星ランキングとしては、
1位がシリウス、
2位はカノープス、
3位はケンタウルス座α星だそうですが、
シリウスの地球との距離は約8.6光年、
ケンタウルス座αはもう少し近く、約4.3光年の距離。
しかし、カノープスはそれらより遥か遠く、
約310光年の彼方にあるんだとか。
それにもかかわらず全天で2番目の明るさのカノープスは、
めっちゃ眩しいというわけです。

それもそのはず、カノープスは太陽のおよそ8倍の質量を持つ恒星で、
輝巨星、超巨星に分類される天体であり、
半径は太陽のおよそ70倍、
光度は太陽の1万倍かそれ以上にも達すると測定されているそうです。
もう何をいっているのかよくわかりません。

太陽の数倍以上の質量を持つ恒星しか寿命を迎えるとき、
末期にたどる進化段階に「ブルーループ」というものがあるそうで、
カノープスはすでにその段階。
ほんとに老人星でした。

310光年の遠くにあるカノープス、
光の速さで310年かかる距離からきた光なわけなので、
私達が見る輝きは、すでに310年前の過去のもの。
宇宙単位なので1年2年というレベルではないのでしょうが、
リアルタイムでは、もしかすると、
もうカノープスは消滅しているのかもしれないと想像すると、
不思議な気持ちになります。

ちなみに、カノープスという名前は、
ギリシア神話のトリア戦争後のエピソードに由来しています。

10年の長きにわたったトロイア戦争の後、
スパルタ王、メネラーオスは、
ヘレネーを連れて祖国への帰途につくも、
神様へのお供えを怠ったため怒りを買い、
暴風に襲われて難破しエジプトに漂流。
祖国に帰還するのになんやかんやあって8年もかかってしまった。というお話ですが、
メネラーオスの船の水先案内人・操舵手の名前がカノープスで、
カノープスはエジプトで毒蛇に噛まれて亡くなったそうです。

この星は、一般的にはカノープスの名前で呼ばれますが、
インドではヒンドゥー教のリシ（聖仙）にちなんで「アガスティア」となっています。
また、日本でも房総半島の沿岸部での別名として「布良星」（めらぼし）という呼び名があるそうです。
布良は房総半島南端の漁港で、この方向に見える星という意味合い。
また、南の空にちょっと上ってすぐ沈むので、どこどこ（観測地域）の「横着星」と呼ばれたりするんだとか。

そもそも南極星とは南側の極星（ポールスター）のことで、
天の南極に近い輝星のことですが、
地球の運動の影響で天の南極は移動していくので
南極星の役割を果たす星は時とともに交代していき、
約2万5800年で一周するそうです。

21世紀においては、天の南極に完全に重なる輝星は存在せず、
そのため北極星ほどなじみがなく、重要視もされていないようです。

GPSなどなかった大航海時代は、
船の航行には星を利用していましたが、
北極星のようにわかりやすい南極星がないため、
南の方角を天測するのには、みなみじゅうじ座が利用されました。

みなみじゅうじ座のα星とγ星との角距離を、
α星側に向けて約4.5倍するとだいたい天の南極になるそうです。
南半球の大海原で遭難した時はお試しください。

●福禄寿と寿老人のいわれについて

コンビユニット、南極老人カノープスのメンバー、
福禄寿と寿老人について詳しめに見ていきます。

寿老人

南極老人ズのいわれと成り立ち。

福禄寿は、もともと道教由来の神様ですが、
道教で強く希求される３つの願い、
幸福、封録（財産）、健康長寿の3つを具現化した存在。
幸せよくばりセットです。

中国では、
福星・禄星・寿星の三星をそれぞれ神格化した三体一組のセットで描いた
「三星図」として描かれるのがもともとでした。

福星は木星のことで、裕福な官服を着た黒髪のおじさんでトリオのセンター。
禄星は豊かさを表す金銭や赤ちゃんを抱いた緑色の服のおじさん、
ちなみに「禄」と「緑」が中国語で同じ音だからだそうです。
寿星はカノープスのことで、禿げて長い頭に白ひをたくわえたおじいさん、
ということが多いようです。
一説には、寿星が南極老人のことで、この人がソロで日本に伝わり寿老人になったともいわれます。

三星図はいろいろなバリエーションがあるようですが、
人の姿ではなく、意味や音韻に関連を求め、象徴物として描くものも多いようです。

たとえば、寿星だけを老人の姿で描いてセンターに置き、
その左右に福星を「禄」 lù と「鹿」 lù が同音の蝙蝠、
禄星を「禄」 lù と「鹿」 lù が同音の鹿として描いたり。

こういった伝来物は、
日本人的には音のなじみがないので、
動物やモノを伴った一人の神に見え、
三人セットではなく一人の神格とする認識が流布したと考えられています。

一方、寿老人については、
上記の通り三星の一人、寿星が単品で伝わり、
日本で寿老人となったとも言われています。

寿老人は不死の霊薬を入れた瓢箪を運び、
長寿と自然との調和のシンボルである牡鹿を従えています。
また、不老長寿の桃も手に持っており、
全力で長寿を司るスタイルです。

しかし、いわれもビジュアルも福禄寿と重複するので同一視され、
七福神から外されることもしばしば。
ちなみにその場合は猩猩（しょうじょう）が入ります。

猩猩って誰よ？
という感じですが、
順番に説明するからまあ待て待て。

寿老人

猩猩とは。

猩猩は中国古典書物に登場する獣。
1596年に書かれた「本草綱目」によると、
現在のベトナムあたり原産で
人の顔や足を持ち、毛の色は黄色、人の言葉を理解し、酒を好む。
声は子供のようだが、時に犬が吼えるように振る舞うとか。

お酒と履物が大好きなので、
それらを使って誘い、捕獲すると良いんだとか。
また、この生き物の血で毛皮を染める風習があったと言われ、
それにちなんで赤みの強い赤紫色で「猩猩緋」という色もあります。

資料によっては豚に似ている、犬に似ているという記述もありますが、
正体不明のUMAというわけではなく、
現代では、オランウータンのことであるとされています。

A drawing of the legendary creature shēngshēng (狌狌), also written xīngxīng (猩々), from a 1596年頃 edition of The Classic of Mountains and Seas (山海經, Shān Hāi Jīng).
帰属：胡文焕（1596-1650年活躍）編。 (パブリックドメイン or パブリックドメイン), via Wikimedia Commons

日本では、能の演目「猩猩」が有名。
この中では日本独自の設定で、海に住む精霊とされています。
真っ赤な衣装に着飾り、お酒に浮かれながら舞い謡います。

寿老人もお酒が好きという設定があるので、
お酒好きという共通点から、猩猩が加入したのかもしれません。

そんなわけで、
今回は、南極老人カノープスのメンバー
福禄寿と寿老人の紹介でした。

フロムチャイナ勢の一角の二人、
名前からもわかりやすい福の神でしたね。
次回は七福神編最終回、
中国から来た最後のメンバーです。

引き続きよろしくお願いいたします。

参考：
七福神- Wikipedia
福禄寿-Wikipedia
寿老人-Wikipedia
カノープス-Wikipedia
猩猩-Wikipedia