伝説のチームを紹介する試み。
今回も古代中国の神話に登場するどうしようもない悪神たち「四凶」です。
今回は、四凶一のひねくれ者、窮奇(きゅうき、拼音: qióngjī )。
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●四凶とは
四凶(しきょう、Sìxiōng)とは、
古代中国、三皇五帝(世界のはじまりの後に現れた伝説の帝王たち)の一人、舜帝によって追放された四柱の悪い神たち。
孔子の編纂と伝えられている歴史書「春秋」の代表的な注釈書の1つ「春秋左氏伝」(しゅんじゅうさしでん)に記されており、
饕餮(とうてつ)、檮杌(とうごつ)、窮奇(きゅうき)、渾沌(こんとん)は悪逆非道の限りを尽くし、「四凶」と呼ばれたそうです。
●窮奇について
今回紹介する窮奇(きゅうき)は、中国神話に登場する怪物。
中国最古の地理書「山海経」その中の「西山経」でも紹介されており、
「ハリネズミの毛が生えた牛で、邽山(けいざん)という山に住み、イヌのような鳴き声をあげ、人間を食べるもの」
とのこと。
また、「海内北経」では、
「翼をもった人食いトラ 、人間を頭から食べる」
と説明しています。
また、五帝の1人である少昊の不肖の息子の霊が邽山に留まってこの怪物になったとも。
前漢の政治家 東方朔(とう ぼう さく、拼音:Dōngfāng Shuò )が著した「神異経」では、
「海内北経」と同じく「翼があるトラ」で、現在ではこちらの姿の方が一般的となっているようです。
トラに翼と聞くと朝ドラのタイトルのようですが、そんな素敵なものではなく、こっちのは、
「人語を理解し、人が喧嘩していると正しいことを言っている方を食べ、誠実な人がいるとその人の鼻を食べる。悪人がいると野獣を捕まえてその者に贈る」
とのこと。
全力で悪い方を味方する、性格に難がある怪物です。
ときにはケンカもするけれど、鼻はなるべく食べないで。
ちなみに朝ドラは、
伊藤沙莉さんが主演で大好評でした。
「日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだ、一人の女性の実話に基づくオリジナルストーリー。
困難な時代に立ち向かい、道なき道を切り開いてきた法曹たちの情熱あふれる姿を描く。」
ということで、正しい人の鼻を噛む話ではないようです。
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ドラマで有名になったであろう、「虎に翼」という言葉。
こちら諸子百家の一人、法家の韓非子の言葉に由来しております。
その意味は「強い者に、さらに強さが加わる」ということで、
類義語には「鬼に金棒」「虎に角(つの)」などがあります。
さて、窮奇ですが、他の特徴に「悪人がいると野獣を捕まえてその者に贈る」とのこと。
獲物をプレゼントするところは、かなり猫ちゃんっぽいですよね。
私、猫飼ったことないのであんまりわからないんですが、猫ちゃんも虫とか捕まえて飼い主にくれると聞きます。
トラといえばユーラシア最強の猫ちゃんなので、そういう習性があるのでしょう。
ねこのきもち WEB MAGAZINE様によると、「狩りが成功したことの自慢・報告」「ごはんのおすそわけ」で獲物をくれるそうなので、猫ちゃんが虫とか小動物とかを持ってきた際はしっかり褒めてあげてから処分してください。
虎つながりで、ウチの性格が良い方の猫ちゃんもどうぞ。
少昊の不肖の息子。
また、前回まででも紹介の通り、四凶たちはいずれも高貴な身分の出身。
しかし、性格や素行がいろいろアレでどうしようもないので、まとめて追放されます。
窮奇も同様で、五帝の一人、少昊の息子と言われています。
少昊は、黄帝の子(「路史」では孫)で、西海のほとりにあったと伝わる窮桑(きゅうそう)で生まれます。
「史記」の五帝本紀では、帝嚳の祖父にあたるとされ、
五行の上では金徳・西方・白色を示すので金天氏・白帝とも呼ばれたそう。
「春秋左氏伝」では暦を作成し、官名を玄鳥氏、伯趙氏、青鳥氏、丹鳥氏など、鳥類の名で呼んだんだとか。
少昊が生まれた「窮桑」は高さ1万丈にもおよぶ桑の大木。
前回の檮杌回で触れましたが、1丈が180cmなので、
1万丈となると1.8万Mとなり、高さ18Km になるわけで、べらぼうに大きな木です。
赤い葉をもち、1万年に一度長寿の効果のある果実をつけるとされます。
仙女の皇娥は、天宮で暮らす人々が使う織物を織る事を仕事にしていましたが、
オフの日に天の川をいかだで下り、神木窮桑の木の下で後の黄帝と出会い、少昊を生んだんだとか。
そんな黄帝の息子の少昊の子どもなので、窮奇は黄帝の孫という立場。
前回出てきた三皇五帝の一人、黄帝の孫の顓頊(せんぎょく)の子どもが檮杌なので、檮杌と窮奇も親戚関係になります。
また、このシリーズの最初、蚩尤の回で、
黄帝と戦った最初の反逆者である蚩尤が率いた「九黎」の一族がいましたが、
戦いに敗れた九黎族の生き残りが「三苗」になったというエピソードがありました。
三苗は「三つの氏の苗裔(子孫)たち」の意であるともされ、
帝鴻氏の渾敦・少昊氏の窮奇・縉雲氏の饕餮 をさすともされたりします。
黄帝ルーツの子孫であり、また、蚩尤の流れも組むという説もあったり・・・
まあ、いろいろ矛盾もありますが、非常に興味深いところです。
結局のところ、少昊の子である窮奇も暴れまわって国を乱したため、
他の四凶と同じく、聖人の舜帝に退治され、西の果てに追放されます。
そして饕餮や檮杌と同じく、外から侵入してくる魑魅魍魎を食い止める役割を担っているのです。
窮奇への信仰。
そんな善人を害するという伝承がある窮奇ですが、
宮廷でおこなわれていた「大儺(たいな)」の行事に登場する「十二獣」の一員であったりもします。
十二獣とは、疫鬼や魑魅魍魎を追い払う神様 方相氏(ほうそうし)が使役する、災厄などを食べてくれる12匹の野獣のこと。
悪を喰い亡ぼす存在として語られ、十二神とも呼ばれるそう。
大儺は、大晦日に疫鬼や疫神を払う儀式、または民間で節分などに行われる鬼を払う行事のこと。
皇帝らの前で方相氏が疫鬼たちを恐れさせる内容の舞がおこなわれた後、その鬼たちを内裏の門から追い出して都の外へと払うという儀式です。
日本でも大陸文化が採り入れられた際に宮中で行われるようになり年中行事へ。
「追儺(ついな)」と呼ばれるのが一般的ですが、儺(だ、な)駆儺、鬼遣(おにやらい。鬼儺などとも表記)、儺祭(なのまつり)、儺遣(なやらい)とも呼ばれ、
鬼を追い払う儀式が現代ではいわゆる「節分」の豆まきにつながっています。
なお、上記の方相氏、4つの目をもつ四角い面をつけて右手に戈、左手に大きな楯をもち熊の皮をかぶった姿で演じられていました。
しかし日本では、鬼を追い払う方相氏が次第に毘沙門天などに置き換わり、逆に追い払われる鬼の役になっていったんだとか。
これは、平安時代初期から盛んになった「穢れをきらう思想」により、葬送儀礼と深く関わりがあった方相氏が、穢れの象徴として避けられた事によるのではないかと考えられているそうです。
話は変わって「淮南子」の記述では、
「窮奇は広莫風(こうばくふう)を吹き起こす」※広漠風とは、いわゆる北風のこと。
とあり、風神の一種とみなされていました。
後漢の高誘も「窮奇は天神である。北方におり、道足、両龍に乗り、形が虎に似ている」と注を付けています。
鎌鼬との関係。
「風」つながりか、日本の風の妖怪である鎌鼬(かまいたち)を「窮奇」と漢字表記して読ませることもあるそうです。
伝承では、つむじ風に乗って現われて人を切りつける妖怪です。
これに出遭った人は刃物で切られたような鋭い傷を受けますが、痛みはなく、傷からは血も出ないともされるとか。
そんな鎌鼬、鎌のような爪をもったイタチの姿をした妖怪として描かれる事が多いですが、
別の伝承では、3人組の悪神で、最初の神が人を倒し、次の神が刃物で切り、三番目の神が薬をつけていくんだそう。
そのため出血がなく、また痛まないのだとのことで、そのチームプレー、結局一体何がしたいのか謎です。
なお、現象としての鎌鼬は明治時代、
「旋風の中心に出来る真空または非常な低圧により皮膚や肉が裂かれる現象である」
と説明解釈がなされていました。
この説は一見科学的なので近代以後、一般に広く浸透。
漫画やアニメーション等フィクションにも、しばしば旋風によって物体をカッターのように切り裂く表現がみられます.
しかし実際のところ皮膚はかなり丈夫な組織なので、人体を損傷するほどの気圧差が旋風によって生じることは物理的にも考えられず、
かまいたちが発生する状況で人間の皮膚以外の物(衣服や周囲の物品)が切られているような事象も報告されていないようです。
もっともそれっぽい説としては、
皮膚表面が気化熱によって急激に冷やされるために、組織が変性して裂ける、
いわゆる「あかぎれ」なんじゃないかなあ?とのこと。
鎌鼬の伝承が雪国に多いことにも裏付けられるそうですがちょっとがっかりです。
また、切れるという現象に限定すれば、風が巻き上げた鋭利な小石や木の葉によるもの。という考えもあり、わからなかった方がおもしろかったこともあるという話ですね。
「鎌鼬」自体は調べてておもしろかったので今後、妖怪として紹介しても良いかもしれません。
そんなわけで、
悪人を応援する風の怪物、窮奇でした。
翼を持つトラであったり、風を操る悪神という高スペックですが、
悪人にプレゼントしたり、ちゃっかり魔除けで使われたりしてるせいか、
いまいちヤバそうな感じがなぜかしない、そんな怪物でした。
次回も四凶のメンバーを紹介していきますので、
よろしくお願いいたします。
なお、このブログは、気になったことを調べ、学んだ内容とイラストを紹介するお絵描きブログです。
ソースは主にWikipediaなどになりますので、学術研究ではなくエンターテイメントとしてお楽しみください。
興味のきっかけや、ふんわりしたイメージ掴みのお手伝いになればうれしいです。
窮奇-wikipedia
少昊-wikipedia
三苗-wikipedia
鎌鼬-wikipedia
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