北欧神話について紹介するシリーズ。
今回は、北欧神話で超重要な役割を演じる、ロキの子供達を紹介。
巨大な狼のフェンリル、世界を取り囲む大蛇ヨルムンガンド、冥界の支配者ヘルの3兄妹です。
3兄妹のお父さんは悪神ロキ、お母さんは巨人のアングルボザです。
ロキがアングルボザの心臓を食べて産んだ。という穏やかではない説もあります。
どちらにせよ、ハートを奪ったことは間違いないですね。
●フェンリルについて
フェンリル（Fenrir）は、「フェンに棲む者」の意味で、
フェンってなんじゃいな？という感じですが、湿原のことです。
ロキの子供ですが、姿は人型ではなく狼の姿をした巨大な怪物です。
三兄妹のお兄ちゃんで、彼の弟がヨルムンガンド、三人目に生まれたのが妹のヘルです。
彼らは神々に災いをもたらすと予言されて全員放逐され、
フェンリルは厳重な監視のもとに置かれます。
とても大きくて強いよ
災いをもたらすと言われたフェンリルも、
初めは普通の狼とほとんど違いがありませんでした。
なーんだ、普通じゃん。でもまあ念には念をね。と監視下に置かれることとなりましたが、
ところがどっこい予言の子。
日に日に大きくなり力を増していきます。
これはまずいと神々は彼を拘束することに決めました。
神々はフェンリルを拘束するために、
レージングと呼ばれる鉄の鎖を用意しましたが、簡単に引きちぎります。
それならと、レージングの2倍の強さを持つドローミという鎖を使いますが、
フェンリルは難なく引きちぎるのでした。
困った神々、小人ドヴェルグに作らせたグレイプニルという魔法の紐を用いることに。
グレイプニル
グレイプニルの材料はこちら
猫の足音、
女の顎髭、
山の根元、
熊の神経、
魚の吐息、
鳥の唾液、
この六つの材料から出来てます。
これらはグレイプニルを作る時に使い切ってしまったので、現在ではこの世に存在しないものだそうです。
熊の神経はあるような気もしますが。
神々は湖にあるリングヴィという島にフェンリルを連れてきて、
紐が見かけよりも強いことをフェンリルに示し、試しに縛られてみちゃいなよ。と勧めます。
そして、「この紐も切れないようなら、オマエ正直大したことないから解放してやんよ。」と挑発。
フェンリルはしばられるの3回目なので、
「いやいや、これはなんかあるな。多分一度縛られたらあかんやつや。」と警戒。
「信用できないから誰かの右腕をワイの口の中に入れるなら縛られてもいいよ。」と要求。
これには神々も尻込みしましたが、
勇敢な戦いの神テュールが進み出て、
「おれがやるよ！」「どうぞどうぞ！」
と右腕をフェンリルの口の中につっこみます。
縛られてグレイプニルから抜け出せないことに気付いたフェンリルは
テュールの右腕を手首の関節のところで食いちぎりましたが、
神々は素早くフェンリルをぎっちり縛り付けました。
フェンリルは暴れて抵抗するので、
神々は下顎に柄が上顎に剣先がくるように剣を押し込んでつっかえ棒に。
開きっぱなしになったフェンリルの口から大量の涎が流れ落ちてヴァン川と呼ばれる川になりました。
ラグナロクではオーディンを丸飲み。
こうして捕縛されたフェンリルですが、ラグナロクのときには解放され大暴れ。
その口は開けば上顎が天にも届き、目や鼻からは炎を噴き出しています。
もう、狼ってなんだっけというレベルのヤバさです。
彼は最高神オーディンと相まみえ、彼を飲み込むという大金星。
しかし、息子ヴィーザルに下顎を靴で踏みつけられ、
上顎を手でつかまれ口から上下に引き裂かれる。という、超絶パワーでやられます。
ちなみに、フェンリルの子供にはスコールとハティという、2頭の狼がいます。
スコールは太陽を、ハティは月を追いかけており、
彼らから逃れるために太陽と月は馬車を走らせているので、太陽と月は運行しているわけです。
ラグナロクではそれぞれ追いつき、飲み込んでしまいます。
●ヨルムンガンドについて
ヨルムンガンド（古ノルド語:Jörmungandr）は、毒を持つ大蛇の姿をしたフェンリルの弟です。
その名は「大いなるガンド（精霊）」という意味。
ミドガルズオルム、ミズガルズの大蛇、世界蛇 と呼ばれることも。
こんなに大きくなりました。
フェンリルと同様にロキの子供達がいずれ神々の脅威となることを予見したオーディンによって、
ヨルムンガンドは哀れにも海に捨てられてしまいます。
しかし、彼は海の底ですくすく成長し、
人間が住む世界ミズガルズを取り巻いて自分の尾をくわえるほど巨大な姿になります。
雷神トールとの因縁
『古エッダ』の『ヒュミルの歌』では雷神トールとのエピソードが語られています。
トールが巨人ヒュミルと船で釣りに出た際、
なんとヨルムンガンドがトールの竿にヒット！
完全に魚扱いです！
釣り上げられたヨルムンガンドをトールは、
おなじみの超絶パワーのハンマー、ミョルニルで仕留めようとしますが、
船が沈むことを恐れたヒュミルが釣り糸を切ってしまったため、海中に逃がしてしまいます。
せっかくの大物を邪魔されて怒ったトールはヒュミルを海に投げ飛ばしましたとさ。
というお話。
また、別のエピソード、『ギュルヴィたぶらかし』でもトールとは絡みがあります。
トールが巨人の王ウートガルザ ロキの宮殿を訪れたとき、
「ネコを持ち上げて床から脚を離してみせよ」と言われたトールが
ネコの胴を高々と持ち上げたものの、床から離すことができませんでした。
実はこのネコ、ウートガルザ・ロキの幻術によって猫の姿に見えていたヨルムンガンドだったのです。
わりといろんなところにいて、ヨルムンガンド、フットワーク軽いです。
まあ、蛇なんで足はないんですけど。やかましいわ。
ラグナロクでもトールと対決
ラグナロク到来の際、ヨルムンガンドは海から陸に上がり、神々に襲いかかります。
その際、大量の海水が陸を洗うことが語られています。
スケールがでっかいです。
ヨルムンガンドと対決する神は、
もちろん因縁の相手、トール です。
トールはミョルニルを3度投げつけ、ヨルムンガンドを倒します。
しかし、ヨルムンガンドが最期に吐いた毒でトールは9歩後退りして倒れ、
決着は相討ちという形で終わることになります。
●ヘルについて
ヘル (Hel, Hela) は、フェンリルとヨルムンガンドの妹。
ヘルだけ姿は人間なのですが、
半身が腐っているという、ある意味一番イヤな仕打ち。
ヘルは死者の国を支配する女神で、
氷の国ニブルヘイムの奥、ヘルヘイムにあるエーリューズニルという館に住んでいます。
他の兄弟は女巨人アングルボザが産んだと言われるものの、
ヘルだけはロキがアングルボザの心臓を食べて、
その後女巨人に変身して自ら産んだという説もあるそうです。
なんてトリッキーな出生、どっちにしても穏やかではないです。
ヘルだけ仕事があります。
ヘルもオーディンによって追放されますが、
送られた先は、アースガルズから遠い氷の世界ニブルヘイム。
そこで、9つの世界の死者のうち名誉ある戦死者を除く人々、
たとえば疾病や老衰で死んだ者達や悪人の魂を支配する役目が彼女には与えられます。
その地はヘルヘイムと呼ばれることになりました。
死者蘇生もできます。（条件あり）
北欧神話の中で唯一、死者を生者に戻すことができる人物です。
オーディンの息子バルドルがロキの策略で殺されたとき、
その母フリッグにバルドルを生き返らせるよう依頼されます。
ヘルは、九つの世界の住人すべてがバルドルのために泣いて涙を流せば蘇生させてもいい、
という条件を与えたのですが、
ロキが化けた女巨人セックだけが泣かなかったので、復活することができませんでした。
ロキはもうほんとに！
ラグナロクの時は
ラグナロクの際、ヘルは戦場に赴くことはありませんでしたが、
死者の爪で造った船 ナグルファル という不吉すぎる船を出し、
死者達や巨人スルトの一族、霜の巨人族を載せて、
アースガルズに攻め込ませるという。役目を果たします。
直接戦わないですが、サポートが凶悪です。
ラグナロクが起きた後で彼女がどうなったのかわかっていません。
また、冥界が滅びたのか、滅びなかったかも、詳しくは不明です。
しかし、ラグナロクが起きている間、
冥界の住人は恐れ慄いている描写があるので影響はあったと思われ、
バルドルなど心正しい人々を残して、
ヘルと彼女の支配する死者達は滅びたと解釈している説もあります。
さてさて今回はロキの子供たちを紹介しました。
3兄妹は北欧神話においては敵キャラになるわけですが、
ゲームなどでもモンスターやボスとして有名ですね。
その境遇はかわいそうなところもありますが、
いずれもとても魅力的な存在だと思います。
今回も内容は Wikipedia 中心に仕入れてきました。
フェンリル-Wikipedia-
ヨルムンガンド-Wikipedia-
ヘル-Wikipedia-
別の参考文献はこちら
世界の神々と四大神話 北欧神話（汐文社）橘伊津姫著
 | 北欧神話 オーディン・ロキほか 図書館用堅牢製本 （世界の神々と四大神話） [ 橘伊津姫 ] 価格:1980円 |
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