今回も北欧神話の神様を紹介するシリーズ。
第4回はフレイです。
豊穣の神として、人々に非常に崇拝された人気のある神様です。
●フレイについて
「フレイ」とは「主」を意味し、正式な名前は「ユングヴィ・フレイ・イン・フロージ」
「実り豊かなユングヴィの君」という意味。
ちなみにスウェーデン最初の王家は彼の子孫とされ、ユングリング家を名乗っています。
また、妖精の支配者とされており、神々から妖精の国アルフヘイムを贈られたそうです。
フレイには双子の妹のフレイヤがいて、二人とも神々の中でも最も美しいことが特徴。
フレイの家族
妹は愛の女神フレイヤ。
父は海神ニョルズ。母は、ニョルズの妹または巨人女性のスカジ。
妻は巨人のゲルズで息子はフィヨルニル。
召使いにスキールニルと妖精のビュグヴィルとベイラがいます。
彼らはヴァン神族出身で、アース神族との戦争の終了後にアースガルズに移り住んだそうです。
和睦のための人質交換ですね。
なお、アース側の人質としてはオーディン回で出てきた、
賢者の巨人ミーミルとヘーニルのコンビが送られてきましたが、
ヘーニルがポンコツだったので、ミーミルの首を切られて送り返されています。
ミーミル、とんだとばっちり。
双子の妹のフレイヤと同じく、二人とも神々の中でも最も美しいことが特徴。
イケメンなのですが恋には奥手で、
妻となる巨人のゲルズに一目ぼれしますが、
プロポーズは召使いのスキールニルに行ってもらっています。
そこはさ!自分で行かなきゃ!
●フレイの持ち物
フレイもさまざまなアイテムを持っており、
いずれも神話らしい個性的で不思議な持ち物です。
1 妖精国アルフヘイム
光の妖精(エルフ)の住む国で九つの世界の第一層にあるとされます。
上記の通り、フレイがここの王ですが、最初の歯が生えたお祝いに神々から贈られたそうで、
なんともほっこりしますが、プレゼントが豪華です。
アルフヘイムには光のエルフが住んでいますが、
ちなみに闇のエルフもいて、彼らが住む国はスヴァルトアルファヘイムと呼ばれ、第二層にあるそうです。
2 グリンブルスティ
金色の毛をした猪でフレイの乗り物。
水中や空中をどんな馬よりも早く駆け抜けるそうです。
スリーズルグタンニ(Slidrugtanni)という別名を持ち、
古ノルド語で「恐るべき歯を持つ者」という意味だそうです。
恐るべき歯です。絶対噛んできそうなうえに強そうです。
3 スキーズブラズニル
全ての神族を乗せうるほど巨大な帆船ですが、
折りたたむと袋に入るほどの大きさになる。という便利アイテム。
ドラえもんかな?
帆を張った時には、どこからともなく風が吹き船を進めることができるというので、
これまた便利です。
ロキがやらかした、トールの奥さん丸坊主事件で、
代わりの金髪を小人の鍛冶屋に作らせたとき、
グングニルやミョルニルといっしょについでに作らせた宝物の一つです。
4 ブローズグホーヴィ
「血にまみれた蹄」のといういかつい意味の名前の馬です。
5 勝利の剣
「勝利の剣」というド直球な名前ですが、
使い手が正しい者であれば、使い手の元を離れて巨人族と戦うという剣。
北欧神話は「オートで戦って戻ってくる」のが好きなようです。
切り裂けない物はなく、刃の輝きは太陽にも劣らないそうです。
この剣はまた後で登場しますので。
●フレイのエピソード
神話内における、フレイのエピソードをご紹介します。
大事なものをすぐあげちゃう。
『ギュルヴィたぶらかし』や『スキールニルの歌』によると、
上記の通り、一目惚れした巨人の女性ゲルズを手に入れるため召使いのスキールニルを巨人の国に遣わせ、
その褒美として自分のもつ「勝利の剣」をあげてしまいます。
他にも、「暗い揺らめく炎も越えられる馬」もあげたので、
スキールニルはゲルズの館を囲む炎を乗り越えることができたんだとか。
またプロポーズのお土産として、黄金を生み出す腕輪も大サービス。
フレイは、このとき勝利の剣を手放してしまったので、
ラグナロクの時に、鹿の角で戦うハメになり、巨人スルトに敗れることとなってしまいます。
さすがにロキからも、
「ゲルズを黄金で買った上に剣をやってしまい、
ミュルクヴィズ(アースガルズとムスペルの国を隔てる暗い森)を越えてムスペルの子らが来たらどうやって戦うのか」
と、あきれて責められています。
「ムスペルの子」とは灼熱の国ムスペルヘイムに住む炎の巨人たちです。
勝利の剣は北欧神話を代表する神の武器の一つなので、まあその通りですよね。
鹿の角で巨人を倒す。
フレイは勝利の剣以外の武器としては、「鹿の角」がお気に入り。
剣や槍ならいざ知らず、そもそも鹿の角でどうやって戦うのか?という疑問が残りますが、
実は、鹿の角で巨人ベリをたおしたことがあるそうです。
イケメンなうえに腕っぷしも強いんですね。
いったいどうやって勝ったのかも不明ですが、鹿の角でやられたベリも不憫。
ちんちんがでかい。
フレイは、豊饒や多産のシンボルなので、
たくましい男性器を持つ神として形作られることが多いといいます。
また、フレイにとって聖獣とされたのが、猪や豚、馬で、
猪と豚も多産であるため、フレイやフレイヤに気に入られ、2人は猪に乗って移動することがあったそうです。
双子のきょうだいで仲良くイノシシに乗って移動する神様、かなりシュールですね。
北欧の ユールの祭り にはフレイへの生贄として豚が欠かせないそうですが、
現代のクリスマスでも豚の形のお菓子が付き物になっているんだそうです。
子孫繁栄の願いが込められていますわけですね。
●フレイの最期
上の方でも触れたとおり、フレイもラグナロクで命を落とします。
ラグナロクでロキ率いる巨人の軍勢が攻め込んできたとき、
フレイは炎の巨人 スルト と相対します。
スルトは世界の南の果て、灼熱の国 ムスペルヘイム の入り口を守る炎の巨人。
世界にまだムスペルヘイムとニヴルヘイムしかなかった時代から存在しているといわれ、
太陽のように輝く「炎の剣」を持っていて世界を焼き尽くすという恐ろしい存在です。
※炎の剣は、実はフレイが手放した勝利の剣であるともいわれています。
そんな超強敵と戦わないといけないにもかかわらず
勝利の剣はスキールニルにあげてしまったので、
「シカの角しかもってねえ!」という絶望的な状況のフレイ、
ただでさえ強くて炎とか使ってくる上に、しかも巨人というラスボス級の相手に
もちろん鹿の角では敵わず、残念ながら敗北してしまうのでした。
鹿の角て、そんなお土産みたいなものじゃなくて、
剣なり槍なり、せめてもうちょっとマシなものもあったでしょうに。
そんなわけで今回は北欧神話の豊穣の神、フレイの紹介でした。
イケメンなうえに、他の神様のようなクズエピソードが少ない珍しい善人キャラではありますが、
気前の良さで身を亡ぼす、残念イケメンではありますね。
でもケチよりぜんぜん素敵だから自信を持って!
今回も内容は Wikipedia から仕入れてきました。
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