北欧神話 神話・伝説

23北欧神話シリーズ3 ロキについて

今回の北欧神話シリーズは、
神話内で一番のトリックスター、ロキの紹介です。
第3弾で登場の彼も北欧神話では欠かすことができない重要な神様です。

ロキ(古ノルド語: Loki)は、北欧神話に登場する悪戯好きの神。
その名は「閉ざす者」、「終わらせる者」を意味しています。
神々の敵である巨人族(ヨトゥン)の血を引いているのも特徴的です。

ロキは上述の通り、巨人の血を引いているんですが、
最高神オーディンの義兄弟となってアースガルズに住んでおり、
先に紹介したオーディンやトールと共に旅に出ることもあります。

変身術を得意とし、
男神であるものの時に女性にも変化。
自身が変身するだけでなく、
他者に呪文をかけて強制的に変身させたこともあります。

美しい顔を持っていますがその性格は邪悪。
気分屋で気が変わりやすく、
狡猾さでは誰にも引けを取らず、またよく嘘をつきます。
すでにもう、悪い予感しかしません。

元は火を神格化した存在だったと考えられているようで、
洋の東西を問わず、火の神様はトラブルメーカーになりがち。
おそらく、大きな恩恵を与えるとともに、
使い方で生命や財産を危険にさらす「火」というイメージなのでしょう。


ちなみに、巨人の王で
「ウートガルザ・ロキ」という人がいたり、
「ロギ」という人がいたりしますが、
ロキとロギとウートガルザ・ロキが、ウートガルザ・ロギの宮殿で一堂に会する話」が残っているので別人です。
とてもややこしい。


北欧神話に登場する神々は、それぞれを象徴する武器を持っていますが、
ロキは「空中や海上を走れる靴」(「陸も海も走れる靴」または「空飛ぶ靴」とも)を持っています。

ロキの家族としては、
父はファールバウティという巨人、
母のラウフェイはアース神族の一員だったという説もありますが、詳しくは記録がありません。
妻はシギュンと女巨人アングルボザ。
兄弟にはビューレイスト、ヘルブリンディがおり、
義理の兄弟はオーディンです。

子供は、シギュンとの間の子にナリとナルヴィがいますが、
『スノッリのエッダ』ではナリ(別名がナルヴィ)とヴァーリとなっています。

アングルボザとの間の子にはフェンリルヨルムンガンドヘル
この三兄弟は後ほど重要な役割を演じます。

また、馬のスヴァジルファリとの間の子にはオーディンの愛馬スレイプニルがいます。
「馬の」というところが気になりますが、まあ待て待て。

ただでさえみんなアレな北欧神話ですもの、
その中でも一番の問題児ですのでエピソードのやばさにも事欠きません。

ロキ

1.それはやりすぎ事件


ある日、オーディンの息子で、
光の神のバルドルという、人気者ので美しい神様がいました。

彼はある日から悪夢に悩まされるようになり、
心配したお母さんのフリッグは、世界中の生物・無生物に彼を傷つけないよう約束させます。

ちょっと過保護だと思います。

そのため、いかなる武器でも彼を傷つけることは出来なり、
神々の間では、
バルドルに様々なものを投げつけるという娯楽
が大流行。

その時点でもうちょっとどうかと思いますが、
実はモンペ フリッグからの約束の際、
ヤドリギだけは若すぎて契約が出来ていなかったことで、
これが唯一の弱点なのでした。

そして、嫌な予感は的中。
ロキがそのことを知り、
よせばいいのに悪いことを思いつきます。

この楽しい娯楽に神々が興じる中、
バルドルの兄弟のヘズは、盲目のために遊戯に参加していませんでした。

あろうことかそんなヘズをバルドルはたぶらかし、
ヤドリギ(ミスティルテイン)を投げさせます。
かわいそうに、これによりバルドルは命を落としてしまうのです。
なにより、もうモラルが行方不明すぎてドン引きです。


これにフリッグは嘆き悲しみ、
バルドルの弟、ヘルモーズは死の国ヘルヘイムへ向かい、女王ヘルに彼を生き返らせてくれと頼みます。

ヘルは
「本当に、全世界の者が彼のために泣いているというならば生き返らせてやろう」
と約束。
バルドルの人徳とフリッグの頼みで、
本当に全世界のあらゆる生物・無生物が彼のために泣いたのですが、
たった一人、
巨人の女・セック だけが泣かなかったのでバルドルは戻っくることができませんでした。

もうおわかりですよね。
実はこのセックの正体こそロキ。
このことがバレたロキは神々に捕らえられ罰を受けることになります。


この罰がまた壮絶で、
鉄に変わった息子ナリの腸で巨大な岩に縛られ拘束されたうえに顔の上に毒蛇を固定。
毒液が顔に垂れるようにセッティングされる。

というイヤすぎる刑です。

毒液が顔にかからないように奥さんのシギュンが器で受けてあげますが、
毒が器にいっぱいになったら捨てにいかないといけません。
毒を捨てにシギュンが彼の元を離れるとき、
毒液は顔に直撃。
ロキは悶え苦しみます。
苦痛によって猛烈にもがくロキは地を揺るがし、
その振動が地震になるのだといわれます。

なお、バルドルの死によって光を失った世界はやがてラグナロクを迎えることとなるのです。

ロキ

2.トールの嫁丸坊主事件


次の被害者はトールの妻のシヴ

彼女は自慢の金髪を持っていましたが、
ロキのいたずらで切られ、あろうことか丸坊主にされてしまいます。
またもやモラルが行方不明。

トールは怒りのままに彼を追い回し、
シヴのものと全く同じ金髪を小人の鍛冶屋に作らせることをロキに約束させます。


金髪って作れるの?
というところも疑問ではありますが、
シヴの金髪の他にも、

オーディンの槍グングニル
トールの槌ミョルニル
フレイの船スキーズブラズニル
黄金を生み出す腕輪ドラウプニル

を騙して作らせます。
さらっとでてきましたが、
オーディン回やトール回でも登場したかなり重要なアイテムです。

ロキ

3.でもトールとは仲良し


上記の一悶着もありましたが、
最も仲がよいとされるのは雷神トール

連れ立っていっしょに巨人の国を冒険しており、
ロキの悪知恵によってトールは何度も窮地を逃れています。

冒険の旅への同行を申し出た際、
「トールは頭が鈍いから、(頭の切れる)自分がいたほうが安全」
とロキは言っていますが、トールは特に怒っていません。

また、トールも、
寝床に使える場所が見つからず野宿になることを不安がったロキに対し、
「フェンリルの親なのにオオカミが怖いのか」
と笑った。というエピソードがあり、
二人は堂々と皮肉を言い合えるほどの仲だったようです。
仲良しで何よりです。

ロキ

4.子供が独特。


他の神々と同様に、
ロキも子供がたくさんいますが、
彼の子供たちは少し独特です。

毒蛇の毒を受け止めているシギュンの他に、
女巨人のアングルボザという奥さんがおり、
彼女との間に生まれたのが、

大蛇のヨルムンガンド、巨狼フェンリル、半身が腐っているヘル の3兄弟。

いずれも、もはや怪物達なのですが、
彼らは神々の脅威になると予言され、
ヨルムンガルドは海に投げ捨てられ、
フェンリルは魔法の紐グレイプニルで縛られ、
ヘルは、冥界ヘルヘイムに投げ落とされます。

子供たちは不憫なのですが、
ヨルムンガンドとフェンリルはそれぞれ大きく育ってラグナロクの際に神々と死闘を繰り広げ、
ヘルは冥界の支配者になります。


また、もう一人、というか一頭、
オーディンの愛馬である8本脚の馬 スレイプニル もロキの子供。

アース神族が、人間が暮らす世界「ミズガルズ」を造ったりなどして暮らし始めていたある日、
石工に変装した巨人がやってきて神々に提案を持ちかけました。,

石工は、
強く、高い、新しい壁を建ててミズガルズを囲むかわりに、
月と太陽を手に入れ、フレイヤと結婚したい。
と要求。

神々は大いに怒りましたが、
ロキは、
「誰の助けも借りずに冬至から夏至の間の約半年で壁を完成させたら報酬を支払おう、
ただし、工期が遅れたら報酬は無効な。」

と対案を提示。

石工は彼の馬、
「スヴァジルファリを使っても良いならOK」
という条件で交渉成立。
工事がスタートします。


冬の初めの日から城壁の建設が開始、
馬のスヴァジルファリは巨大な石を運んで大活躍。
たった1人と1頭の大工事は夏が始まる数日前、完成に近づきます。

「何とかなっちゃうんじゃない? コレ。」
と焦った神々は、
発注したロキに責任を取れと迫ります。

そこでロキは雌馬に化け、スヴァジルファリを誘惑。
スヴァジルファリはロキを追いかけて作業を放り出してしまいました。

そんなわけで雌馬になったロキとスヴァジルファリの間に生まれた馬がスレイプニルです。
理屈はわかりますが、ぶっ飛んでますよね。

作業遅延で焦った石工は巨人の姿を現し、
トールにミョルニルで打ち倒され始末されます。
神々、どいひー。

北欧神話終盤、最終戦争ラグナロクの日、
世界中の全ての封印や足枷と縛めは消し飛び、
ロキは
巨人族を率いてアース神族を滅ぼすために出陣

束縛から解放された巨狼フェンリルはオーディンを飲み込んで倒すも、オーディンの息子のヴィーザルに倒され、

大蛇のヨルムンガンドも大量の海水とともに陸に攻め込み、トールと戦って相打ちに終わります。

ロキも光の神ヘイムダルと戦い、相打ちに倒れたのでした。


双方に多くの犠牲を出した後、
巨人スルトの放った炎が世界を焼き尽くし、
九つの世界は海中に沈みラグナロクは幕を閉じます。

闘いの後、大地は水中から蘇りバルドルやヘズは死者の国より復活。
新しい世代の神々により世界は再生されるのでした。



そんな感じで北欧神話最大のトリックスター、ロキの紹介でした。
ロキが見せる邪悪な面はキリスト教の伝播に伴ってサタンの影響を受けたとの説もあるそうです。

アースガルズに厄介事を持ち込む一方で、
様々な重要アイテムをもたらしたり、神々を窮地から救い出したりと役に立つ一面も。
コミカルな面もあったりと一概に憎めないところもある、魅力的なキャラクターですね。


今回も内容は Wikipedia から仕入れてきました。
ロキ-Wikipedia-

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文章の一部を加筆しました。

2024 12/9 
文字サイズ、構成を修正しました。

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