歴史 気になる事柄を学ぶシリーズ 神話・伝説

102 伝説のチームを紹介する試み 四霊(しれい)編③ 鳳凰

ごきげんよう、ハゲと天パです。

「伝説のチームを紹介する試み」。
黄龍、麒麟と続いてぬるっと始まった四霊編。
今回は、引き続き四霊の一角、鳳凰です。


中国神話において、良きことが起こるしるし「瑞兆」として姿を現す動物「瑞獣」。
瑞獣もいろいろおりますが、代表的なものが、
応龍、麒麟、鳳凰、霊亀 の4種。
これらは「四霊」と呼ばれています。 

四霊


四霊は4分類された生物群の長とされており、
「万物は火・水・木・金・土の5種類の元素からなる」という考えである五行説に基づく考え方では、

魚や爬虫類のように鱗を持つ「鱗虫」、
鳥のように羽を持つ「羽虫」、
獣類のように毛をもつ「毛虫」、
甲殻類のように固い殻や甲羅をもつ「甲虫」


という4つのカテゴリに分けられ、これらそれぞれの長が四霊です。

なお、「虫」は現在の「小さな生き物」という意味合いの虫ではなく、「生き物全般」を意味しています。



鳳凰(ほうおう)は、中国神話の伝説の霊鳥。
聖徳を持った天子の代に現れるとされ、 中華文化における最も縁起の良い鳥とされています 。

中国のみならず、中華文化の影響を受けている日本・台湾・韓国・ベトナム・モンゴル・シンガポールなど、いわば「漢字圏」の国々で広く知られ、絵や彫刻・建築・模様・シンボル、はたまた物語の中でもよく登場しています。

鳳凰

鳳凰のすがた。


鳳凰の発生は紀元前2世紀ごろ、前漢の時代に考え出されたといわれていますが、ハッキリとした記録はなく、諸説もあるようです。
その姿は麒麟と同様に色々な動物の特徴が混ざり合っているようで、
古代文献によれば、

頭は鶏、頷(あご)は燕、頸(くび)は蛇、背は亀、尾は魚で、色は黒・白・赤・青・黄の五色。
高さは六尺(約180cm)程とされる。

※「爾雅」(中国最古の類語辞典)17章より

鶏に似ており、頸には「徳」、翼に「義」、背に「礼」、胸に「仁」、腹に「信」の紋がある。
※「山海経-南山経」

前は鴻(おおとり・ヒシクイ)、後は麟、頸は蛇、尾は魚、顙(ひたい)は鸛(こうのとり)、腮は鴛(えん・オシドリのオス)、紋様は龍、背は虎、頷は燕、喙(くちばし)は鶏。
※「説文解字」

頭は蛇、頷は燕、背は亀、腹は鼈、頸は鶴、喙は鶏、前部は鴻、尾は魚に似ており、頭は青(緑)、翼を並べるとされ、孔雀くらいの大きさ
※「宋書」巻28 志第18

高さ一丈(約3.07m)ほどで、尾は鯉に似、色が濃い。
※「癸辛雑識」

というわけで、それぞれ記述ががフリーダムですが、要するにカラフルででっかい鳥です。


春秋時代の「詩経」「春秋左氏伝」「論語」によると、
「聖天子の出現を待ってこの世に現れる」といわれる瑞獣(瑞鳥)のひとつとされており、上記の通り麒麟・霊亀・応竜とともに「四霊」のメンバー。

※2回前の記事なので、今一度書いておくと、一番ハイクラスな社長級の竜が齢をとって、会長級になると黄龍になります。
このたとえはいろいろ正しくないですが、まあイメージです。




鳳凰

食べ物・ゲットできる場所、その他


鳳凰は、霊泉(醴泉〈れいせん〉、甘い泉の水)だけを飲み、
60-120年に一度だけ実を結ぶ竹の実のみを食物とし、
梧桐の木にしか止まらない。
という記述があります。

「詩経」より
「鳳凰鳴けり、彼の高き岡に。梧桐生ず、彼の朝陽に」
「鳳凰は梧桐にあらざれば栖まず、竹実にあらざれば食わず」


しれっとでてきた「梧桐」はアオギリの漢字。
アオギリは中国では鳳凰が住む樹とされ、中国神話の創造神 伏羲 がはじめて桐の木を削って古琴を作ったという伝説があるそうです。

中国人の季節感とアオギリは深い関係があり、
七十二候のひとつに「桐始華」(清明初候)があったり、
アオギリの葉が色づくのは秋の代表的な景色だそう。
王昌齢の「長信秋詞・其一」に「金井梧桐秋葉黄」、白居易「長恨歌」にも「秋雨梧桐葉落時」というフレーズが残っています。
ちなみにアオギリの花言葉は「秘めた意思」「秘めた恋」だそうです。


なお、仙人たちが住むとされる伝説上の山、 崑崙山 に棲んでいるともいわれていたり、
中国の西方にあるという沃民国(よくみんこく)や、その南にある孟鳥国(もうちょうこく)に棲むともいわれます。

その沃民国には、不老長寿の霊薬であるとされる鳳凰の卵がの野原一面にあると伝えられており、
これはビジネスチャンスですよ。

「説文解字」では
「東方君子の国に産し、四海の外を高く飛び、崑崙山を過ぎ、砥柱で水を飲み、弱水で水浴びをし、日が暮れれば風穴に宿る」
とあり、鳳凰の一日のルーティンはこんな感じです。


鳳凰

鳳凰のバリエーション。


鳳凰は「羽ある生物の王」で、羽を持つ生き物360種類の長であるとされますが、
龍や麒麟と同様に一応鳳凰もバリエーションがあります。

「山海経」には、五色の鳥として鳳鳥(鳳)・鸞鳥(鸞・らん)・凰鳥(凰)の3種が挙げられ、
鳳(ほう)はオス、凰(おう)はメスを指すんだとか。
また、鳳凰のうち赤いのを鳳、青いのを鸞、黄色いのを鵷鶵(えんすう)、紫のを鸑鷟(がくさく)、白いのを鴻鵠、と色でわける説もあるようです。
「毛詩陸疏広要」


青い色違い鳳凰、鸞(らん)は、5音の声を持ち、赤に5色の色をまじえた羽をたたえているとされています。
「淮南子」によれば、「応竜は蜚翼(ひよく)を生み、鳳凰が鸞鳥を生み、鸞鳥が諸鳥を生んだ。」としていますが、
唐の「初学記」によれば、鸞は鳳凰の雛のこととなっていたり、
江戸時代の「和漢三才図会」では鸞は実在の鳥で「神霊の精が鳥と化したもの」としていたり。
鳳凰が歳を経ると鸞になるという説もあったりと諸説あります。

また、黄色の鵷鶵(えんすう)は、「山海経」によると「鳳凰とともに住む」とあり、一緒に住んでいる鳳凰とは別の鳥だけど、一緒に住んでるから習性も似てるよね。とのこと。
「荘子・秋水篇」でも
「鵷鶵、南海を発して北海に飛ぶ。梧桐に非ざれば止まらず、練実(竹の実)に非ざれば食わず、醴泉(甘い味のする泉の水)に非ざれば飲まず」
とあるので、行動のパターンや住処、食性は鳳凰とまあ一緒な感じです。


また、別名として、雲作、雲雀、叶律郎、火離、五霊、仁智禽、丹山隠者、長離、朋、明丘居士などがあり、黄鳥・狂鳥・孟鳥・夢鳥などの伝説の鳥も鳳凰と同一とする説もあるそうです。


四神の朱雀と同一視する説もあるようですが、
ウチの場合は別のキャラクターとして、「朱雀の師匠」という立ち位置にしてみました。
だってその方がおもしろいんで。

鳳凰と朱雀




鳳凰

鳳凰のモデル。


鳳凰のモデルとなった実在の鳥類については諸説ありますが、
マクジャク、キンケイ・ギンケイ、オナガキジやジュケイ類といった、中国に生息するキジ類とする説、
マレー半島に生息するキジ科の大型鳥であるセイラン(青鸞)とする説、
マレー半島に生息するカンムリセイランという説 があるそうです。

このカンムリセイランという鳥は、
頭がニワトリに似、頸がヘビのようで、背中に亀甲状の模様があり、尾が縦に平たく魚に似ている。
(鳥類学者蜂須賀正氏の論文「鳳凰とは何か」)
という特徴があるんだそう。
これもう鳳凰やんと思って画像を見たところ、色以外はかなりいいとこ突いてました。

カンムリセイラン-wikipedia


笹間良彦氏によると、鳳凰の相似霊鳥である鸞については、
キヌバネドリ目のケツァールが、鸞の外観についての説明に合致するとのこと。

ケツァールはメキシコ南部からパナマにかけての山岳地帯の森林に生息しているとてもきれいな鳥で、体長自体は35cm程度ですが、オスは長い飾り羽をもち、これを含めると全長は90~120cmになります。

古代アステカでは農耕神ケツァルコアトルの使いであり、その羽毛を身につけることは最高位の聖職者と王だけに許された特権だったんだとか。
ちなみにグアテマラの国鳥で、通貨単位名でもあるそうです。

ケツァール-wikipedia



鳳凰

フェニックス・ベンヌ・フマ・鳳凰。


また、他の鳥の神様や幻獣と同一視されることも多く、一番メジャーなのが、フェニックスでしょう。
鳳凰は欧米では東洋のフェニックスとされ、英語では Chinese Phoenix 〔中国のフェニックス〕だそうです。

なお、西洋のフェニックスとは姿がかぶっちゃった感じですが、いわずもがな本来別系統のものであり、特徴も異なります。

フェニックスの最大の特徴としては、寿命を迎えると、自ら薪から燃え上がる炎に飛び込んで死に、再び蘇るところ。
そのため不死鳥と呼ばれ、その伝承や見た目から「火の鳥」ともいわれています。

一方、鳳凰はおめでたいことが起きる兆しとしてのレア動物というところが特徴。
長寿ではありますが復活はしません。

また、鳳凰は雌雄の別があり卵も産みますが、フェニックスは雄のみで単性生殖をおこないます。


フェニックスはエジプト神話にに登場する不死の霊鳥 ベンヌ がルーツですが、
ベンヌは世界の始まりに生まれ、原初の海から揚がった太陽を抱いて暖め、孵化させたんだとか。
またこの世の最初に誕生した鳥なので、ベンヌが鳴き声をあげた時に世界の時間がスタートしたともいわれます。


また、ペルシア神話にも伝説の鳥 フマ というのもおり、「ペルシアのフェニックス」と呼ばれています。

このコは鳳凰と似ている部分が多く、フマは半分が雄でもう半分が雌なんだそう。
その影の落ちかかった者すべてに恩恵を与え、ほんのわずかな間でも、その頭に乗ることのできた幸運のものは、王になることが期待できる。といいます。

ベンヌ、フマ、鳳凰は死と再生の象徴(政治的には新王朝の到来の象徴)として日の出を告げる鳥の神格化であり、神話学的に同一起源である可能性も指摘されています。


鳳凰

日常の鳳凰と、日中におけるデザインの違い。


上記の通り、鳳凰は漢字文化圏で馴染み深い霊獣。
古代から中世にかけて、東アジア全域にわたり鳳凰の意匠が装飾によく使用され,
日本でも美術や工芸などよく題材に使われています。

枕草子によると日本の平安時代、伝説にちなんで桐の家具に鳳凰を彫刻するものが流行したとか。
また、宇治平等院鳳凰堂や、京都鹿苑寺金閣の屋上にあるものも有名です。

現代では旧一万円札や10円硬貨などの通貨や郵便切手に使用され、
日本赤十字社、角川グループなど、各種団体の意匠にも取り入れられていたりと、
実は意外と普段もよく目にする鳳凰なのでした。


ちなみに中国から日本へ伝わるタイミングでデザインも変化が生じたとのこと。
写真とかないんで基本伝言ゲームですからね。
まあ多少は仕方ないね。

主な違いはこんな感じ。

■大きさ
・現代の中国版:背丈「12~25尺」(3.63636m~7.57575m)
・日本版:背丈「4~5尺」(1.21212m~1.51515m)
大きさが翼竜くらいから小学生くらいにコンパクトになりました。

■容姿
・中国版:頭が金鶏、嘴は鸚鵡(オウム)、頸は龍、胴体の前部が鴛鴦(えんおう※オシドリのつがい)、後部が麒麟、足は鶴、翼は燕、尾は孔雀。
・日本版:頭と嘴が鶏、頸は蛇、胴体の前部が麟、後部が鹿、背は亀、頷は燕、尾は魚。
日本版はより親しみやすい感じになっております。なんか負けた感もちょっとありますが。

ディテールに違いはありながらも、中国も日本もいずれも鳳凰は五色絢爛な色彩に設定。
羽には孔雀に似て五色の紋があり、声は五音を発するとされており、
その美しく高貴で、縁起が良いイメージは共通。
そして現代でも親しまれているモチーフなのです。



そんな感じで瑞獣「四霊」の一角、
おめでたい鳥の王、鳳凰でした。

次回は四霊編ラスト、霊亀を紹介。
引き続きよろしくお願いいたします。



なお、このブログは、気になったことを調べ、学んだ内容とイラストを紹介するお絵描きブログです。
ソースは主にWikipediaなどになりますので、学術研究ではなくエンターテイメントとしてお楽しみください。
興味のきっかけや、ふんわりしたイメージ掴みのお手伝いになればうれしいです。


鳳凰-wikipedia
アオギリ-wikipedia
フェニックス-wikipedia
ベンヌ-wikipedia
フマ-wikipedia




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