七福神 神話・伝説

70 伝説のチームを紹介する試み 七福神①導入編

伝説のチームを紹介する試み、
福の神のドリームチーム七福神 編です。
だれでも聞いたことがあるでしょうが、
詳しめに紹介していきたいと思います。



七福神は日本において民間で信仰されている福徳の神の集まりです。
一般的には、

大黒天
恵比寿
毘沙門天
弁財天
福禄寿
寿老人
布袋尊


とされており、
インド、中国、日本とそれぞれの国から集まった国際的なグループです。
七柱の面々はそれぞれがヒンドゥー教、仏教、道教、神道といったルーツを持っていているわけですが、
独自にいろいろな要素が習合したり変化したりして今の形になっているのが面白いところ。

また、七福神に一神を加えて八福神としているケースもあったりと、
準レギュラーがいたりゲストメンバー出演があったりとバラエティーも実に豊かです。

今回は導入編として、七福神の概要や歴史をお送りします。


グループの始まりとしては、
平安時代に仏教のレジェンド、最澄が比叡山で
インドのヒンドゥー教の神である 大黒天 を台所の神として祀ったことがはじまりといわれています。

初代プロデューサー 最澄

それが徐々に広まって民間で信仰されるようになりました。
生活に密着した台所の神様として活動開始。
初期メンは大黒様だったんですね。

次第に民間において日本オリジナルの神である 恵比寿 とセットで信仰されるようになっていったようですが、
歴史的な経緯はよくわかっていないそうです。


その後、平安時代末期には
京都 鞍馬山の毘沙門信仰からはじまった 毘沙門天を加え、三神のユニットとして信仰されるようになります。
この三神セットのパターンでの活動時期は長く、かなり後まで一般的だったのですが、
恵比寿と毘沙門天はいわゆるフォルムチェンジ(本地)と考えられていたりする背景や、
平安末期から鎌倉初期の頃にバズった、近江 竹生島の弁天信仰の影響もあって弁財天 が加入。
毘沙門天とチェンジで「恵比寿・大黒・弁才天」というスリーピース構成での活動も増えていきます。


室町時代になると、
仏教界隈で活動していた布袋尊、道教出身コンビの 福禄寿&寿老人 といった、
フロムチャイナ勢がシーンに上陸し、グループに加入。
初期はメンバーチェンジもあったりと一定ではなかった模索の時期もありましたが、
七柱のメンバーでの「七福神」という体制が整います。


ちなみになぜ「七」に落ち着いたかというと、
インド伝来の仁王経の中にある「七難即滅 七福即生」という仏教語に由来。
「この世の7つの難が消滅し、7つの福が生まれる」という意味ですが、
これがグループのコンセプトです。

室町時代といえば銀閣寺に代表される東山文化の時代。
中国の文化に影響されて大陸的な水墨画が多く描かれ、
もてはやされた画題である『竹林七賢図』(竹林の七賢人)に見立てて、
人々は別々に信仰されていた7つの福の神を集め七福神としたとのこと。

なお、このメンバー編成での活動は室町時代末頃に近畿地方からスタートしたとされていますが、
『日本大百科全書』「七福神」の頁では、室町初期には7柱として祀られていたとしています。

当時の七福神の人気はかなり高く、
応永27年(1420年)には七福神の仮装行列が京都で行われたり、
文明年間(15世紀末)には七福神を装った盗賊が出没するも、福の神の来訪として歓迎されたというエピソードもあったり。

一般庶民にもかなり浸透してメジャーになっていたようで、もはや社会現象ですね。
アイドルや2次元キャラ好きな日本人のマインドは当時も今もあんまり変わらないのかも。


時は下り、江戸時代になると、ほぼ現在の顔ぶれに定まりますが、
コアメンバーは現在おなじみの面々ながら、バリエーションが生み出されることも多々あったようで、
例えば、寿老人と福禄寿はともに南極星の化身でありビジュアルも被ってるので同一とみなし、
代わりに吉祥天・お多福・福助・稲荷神・猩猩・虚空蔵菩薩といった新メンバーを加入させたり、
他にも宇賀神・達磨・ひょっとこ・楊貴妃・鍾馗・不動明王・愛染明王・白髭明神といった
多彩なゲストメンバーを加えて期間限定ユニット八福神を結成したりといった、試みがなされています。

七福神、月岡芳年(1882年)
Tsukioka Yoshitoshi, Public domain, via Wikimedia Commons



また、七福神の起源として「八仙起源説」というものもあります。

この八仙と呼ばれるものは中国由来で、
全てが実在の人物(仙人)であったといわれ、
中国各地でその姿を描いた絵が信仰の対象になっているそうです。

これらの絵は、八仙全員が船に乗って海を渡っているという場面を描いたものが主流であり、
この八仙の図を元に、宝船に乗る日本の七福神の図が描かれたとも言われています。

八仙絵図、船尾から右回りで何仙姑、韓湘子、藍采和、李鉄拐、呂洞賓、鍾離権、曹国舅、船外に、張果老
See page for author, パブリックドメイン, via Wikimedia Commons

この八仙、日本ではそこまでメジャーではないですが、
「酔八仙拳」といえばわかる方も多いのではないでしょうか。
酔八仙拳(酔拳)には、8人の仙人がお酒に酔う姿を模した型があり、
酔うほどに強くなるアレですね。
いつか習得したいものです。

さて七福神、
江戸時代中期に現メンバーの七柱が固定されたといわれていますが、
徳川家康のブレーン、 南光坊天海 がプロデュースに関わって七福神の信仰を広めたという説があります。

江戸幕府 影のフィクサー 南光坊天海


江戸時代初め頃、上野の寛永寺を開いた天海は、
徳川家康公に対し、
「公はこの乱世を鎮め、泰平の基を築く福徳を備えている」
と言って七つの福徳を書いて示します。

この七福とは、寿命(寿老人)、人望(福禄寿)、正直(恵比寿)、大量(布袋)、威光(毘沙門天)、財富(大黒天)、愛敬(弁財天)だそうで、
家康は絵師 狩野探幽に命じてこれらを七福神として描かせたんだとか。
この絵が現代に伝えられる七福神の図の元祖だそうです。

さてさて、そんなわけで七福神の概要をお届けいたしました。
次回からは各メンバーの解説を順にお届けしていきます。
いずれも魅力的なメンバーなので掘り下げが面白い面々です。
引き続きよろしくお願い致します。

参考:
七福神- Wikipedia
天台宗公式ホームページ 様

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