宗像三女神 神話・伝説

77 伝説のチームを紹介する試み 宗像三女神 前編

伝説のチームを紹介する試みです。
今回は「チーム」といえるかは微妙ですが。
日本の有名な三姉妹を紹介します。

そう、皆様ご存知の、
宗像三女神(むなかたさんじょしん)です。
あれ?ご存じない?


今回の宗像三女神編は、
前後編でお送りします。






はい、宗像三女神、
通称「宗像シスターズ」ですが、
九州の北の方、福岡県宗像市の宗像大社を総本宮として、
日本各地で祀られている三柱の女神様達です。

宗像市は福岡県の二大都市、
福岡市と北九州市の中間に位置し、
どちらにもアクセス抜群がよく、
現在はベッドタウンとして発展しているそうです。

福岡県宗像市(適当)

古くは中国や朝鮮など、
大陸との貿易で繁栄した地域として知られ、
魏志倭人伝の末盧国(まつろこく/まつらこく)がこの辺りだという歴史研究者もいるんだそう。
地名の由来としては、三女神の降臨・鎮座によってその体制ができたことで、
「身の形」、「身の像」としたことによるんだとか。


宗像大社はその宗像市にある神社になりますが、
日本各地に七千以上ある宗像神社、厳島神社、および宗像三女神を祀る神社の総本社です。
また、「裏伊勢」という、なんだかワクワクするワードでも呼ばれており、
興味が尽きません。

宗像大社社殿
帰属:Saigen Jiro, CC0, via Wikimedia Commons

この宗像大社や沖ノ島といった神域など、
宗像市及び福津市内にある宗像三女神を祀る信仰や史跡・文化財は、

「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群

として、ユネスコの世界文化遺産登録されています。
(2017年登録、日本の世界遺産の中では21番目)


宗像三女神のメンバーは、
タゴリヒメ、タギツヒメ、イチキシマヒメの3柱。

普段は入れない禁足地の沖ノ島にある沖津宮、
大島の中津宮、田島の辺津宮にそれぞれが祀られていて、
沖津宮の「田心姫神(タゴリヒメ)」、
中津宮の「湍津姫神(タギツヒメ)」、
辺津宮の「市杵島姫神(イチキシマヒメ)」とのこと。

しかし、この三姉妹、二大記紀の古事記と日本書紀で
生まれた順番や名前の表記、祀られている宮もちがっていたりと、
けっこういろいろあやふやです。

たとえば「古事記」では化生順に

沖津宮
多紀理毘売命(たぎりひめ)
またの名を 奥津島比売命(おきつしまひめ)

中津宮
市寸島比売命(いちきしまひめ)
別名、狭依毘売(さよりびめ)

辺津宮
多岐都比売命(たぎつひめ)

対して日本書紀では更に複雑。

本文では、
沖津宮 - 田心姫(たごりひめ)
中津宮 - 湍津姫(たぎつひめ)
辺津宮 - 市杵嶋姫(いちきしまひめ)

第一の一書では、
沖津宮 - 瀛津嶋姫(おきつしまひめ)
中津宮 - 湍津姫(たぎつひめ)
辺津宮 - 田心姫(たごりひめ)

第二の一書
沖津宮 - 市杵嶋姫(いちきしまひめ)
では、中津宮 - 田心姫(たごりひめ)
辺津宮 - 湍津姫(たぎつひめ)

第三の一書では、
沖津宮 - 瀛津嶋姫(おきつしまひめ) 別名 市杵嶋姫(いちきしまひめ)
中津宮 - 湍津姫(たぎつひめ)
辺津宮 - 田霧姫(たぎりひめ)

お願いだから統一して・・・という感じですが、
別名もあったり、研究によっては実はタギリヒメとタギツヒメは同じとされていたり。
という感じでもう勘弁していただきたい。

ただし、もしかしたらこういうあやふやにも、
隠されたミステリー、闇に葬られた歴史があるのかもしれません。
YOUTUBEの見すぎです。

とりあえずキリがないので、
ウチでは「田心姫神(タゴリヒメ)」、「湍津姫神(タギツヒメ)」、「市杵島姫神(イチキシマヒメ)でいきます。

まあ、とりあえず、
「3人セットです。」という感じの扱い。
ちなみに上記の「沖津宮」、「中津宮」、「辺津宮」の三社を総称して宗像三社と呼んでいます。


彼女ら、三柱の女神たちは、
日本の最高神で太陽の女神アマテラス(姉)と、
海の荒くれ神、スサノオ(弟)の誓約で生まれた三姉妹。

スサノオとアマテラス



宗像大神(むなかたのおおかみ)、道主貴(みちぬしのむち)とも呼ばれています。
もとは、日本から大陸及び古代朝鮮半島への海上交通の平安を守護する神として海北道中の島々と宗像の田島に祀られ、
大和朝廷によって古くから重視。
「道主貴」という名の通り、
あらゆる「道」の最高神として現在も航海の安全や交通安全などを祈願する神様として崇敬を集めているのです。





いちき

生まれるまでのいきさつ。

日本を作った夫婦の神、イザナギイザナミの間には、
たくさんの子どもの神様がいるわけですが、
その中でも特に重要な三貴神、
アマテラスツクヨミスサノオの三柱がいます。

この神様達は、死んだイザナミを追って死者の国(根の国)に行ったイザナギが、
根の国脱出後、死の汚れを清めようと体を洗ったときに、
目や鼻を洗った水から、なんか生まれた尊い神様なのです。

あるとき、三貴神末っ子のスサノオは、
お父さんのイザナギ神から、

「お姉ちゃんのアマテラスは太陽、お兄ちゃんのツクヨミは月をがんばって治めてるから、お前は海を治めなさい。」

と命じのですが、
スサノオはあろうことか、

「いやだ!ママンに会いたい!さびしい!」

と、泣くばかりで話が進みません。
イザナギもこれには逆ギレ、

「もうええ!お前は追放だ!」

と、スサノオを放りだします。
家出したスサノオは、
お母さん(なのか微妙ですが)のイザナミに会いに根の国に旅立ちます。

そのとき、はたと、

「あ、根の国に行く前にお姉ちゃんに挨拶に行こう。」

と思ったスサノオ、姉のアマテラスの元へ向かいます。

スサノオは基本的に荒くれ者なので、
彼が行くところには、災害級の被害がデフォです。
天変地異を起こし道中を破壊しながら、
アマテラスのいる天の国、高天原を目指します。

一方その頃、姉のアマテラス、
あたりを破壊しながらこっちに向かってくるスサノオを確認するや、

「うーわ、あいつ、国を盗りに来よったで!迎え撃て!焼き払え!」

と、日頃のスサノオの行いが悪いので当然の誤解。
からの、迎撃用意。

そもそもそんな気はないスサノオはびっくり。
「挨拶に来ただけ」と必死に弁解します。


日頃の行いが悪くて信用してもらえないスサノオ、
じゃあ、攻める気がないことを証明するために、
「誓約(うけい)」で白黒つけましょう。となります。




たごり

誓約(うけい)ってなんぞや。

はい、誓約(うけい)ってなんぞや。
当然の疑問ですよね。
※毎回括弧書きするのもなんなので、
ここから「うけい」とひらがなで書きます。

うけいは古代日本で行われていた、神様特有の占い。

あらかじめ、「神意がAにあればA’が起こる、神意がBにあれば、B’が起こる」と宣言を行い、
実際にA’とB'のどちらが起こるかによって、神意がいずれにあるかを判断する。

という方法で判断します。

その方法はわりと何でもいいようで、
この時は、それぞれの持ち物を噛み砕いて吹いたものから子神を生んでみよう。という、
評価基準がふわっふわルールでやりました。
もっと、0か100くらいのわかりやすいのにすべきだったのでは・・・

ともあれ、
スサノオとアマテラスは天の安河という川を挟んでうけいを行います。

まず、アマテラスが、
スサノヲの身に付けていた十拳劔(とつかのつるぎ)を受け取り、
3つに折って天の真名井で濯いでから
ガリガリ噛み砕き、息の霧を吹き出します。
神はどんな顎をしてるんだ。

意外と歯と顎が強い。


この霧から生まれたのが三柱の女神、宗像三女神です。

ちなみに、スサノヲも、
アマテラスが身に付けていた
「八尺の勾玉の五百箇のみすまるの珠」を噛み砕いて吹き出し、
息の霧から五柱の男神が生まれるのでした。

もちろん歯と顎が強い。

アマテラスは、
「五柱の男神は物実(ものざね)が私の物によって成ったのだから、私の子である。
先に生まれた三柱の女神は物実がお前の物によって成ったのだから、お前の子である。」
と言い、
スサノヲは
「わたしの心が清かったから故に、かわいい女の子が生まれわけだね。」
と謎ロジックを持ち出して勝利宣言。

スサノオが国を奪いに来たのではないという、潔白が証明されたのでした。
なんじゃそら。


たぎつ

その後のハナシ。

潔白が証明されてうれしかったスサノオはテンションがブチ上げ。
テンアゲMAXで田んぼを壊したり大事な儀式の祭壇でウンコしたり、
馬の皮をはいで機織小屋に投げ込んだりと結局大暴れ。

投げ込んだ馬の皮のせいで、
機織りの人が亡くなるという悲しい事故が起きたところでついにレッドカード。
スサノオは出雲に追放されます。

弟の悪逆非道にアマテラスはもう心底イヤになっちゃって、
天の岩戸に引きこもり、世界は暗闇に包まれます。
その後に神様一同の策略で引っ張り出されてめでたしめでたし。
それがこの国の神話の一幕なのです。



さてさて、話を戻しますが、
うけいにより生まれたこの三女神に対しアマテラスは、
「九州から半島、大陸へつながる海の道(海北道中)へ降りて、歴代の天皇を助けると共に歴代の天皇から篤い祭りを受けよ。」
と命じます。
このことから、三女神は現在のそれぞれの地に降臨し信仰されるようになりました。


一説には、もとは宗像氏ら九州北部の海人族が古代より祀っていた神だったと考えられており、
海を隔てた大陸や半島との関係が神功皇后による三韓征伐など緊密化したことで、
土着神であった三神が4世紀以降、国家神として祭られるようになったとされています。

古代、畿内から九州を経由し渡海した遣隋使や遣唐使、
遣新羅使もこの海北道中の島々を目印としていたという記録が、
宗像大社神宝館に残っています。

また、別称の「道主貴(みちぬしのむち)」の「ムチ」は「貴い神」を表す尊称とされ、
神名に「ムチ」が附く神は道主貴のほかには
大日孁貴(オホヒルメノムチ、天照大神)、
大己貴命(オホナムチ、大国主)
などのわずかしか見らずSSRです。



そんなわけで、
伝説のチームを紹介する試み、
宗像三女神編、前編でした。
次回はシスターズのそれぞれを紹介していきます。
お楽しみに。


なお、このブログは、
気になったことを調べ、
学んだ内容とイラストを紹介する
お絵描きブログです。

ソースは主にWikipediaなどになりますので、
学術研究ではなくエンターテイメントとしてお楽しみください。

興味のきっかけや、ふんわりしたイメージ掴みのお手伝いになればうれしいです。


参考:
宗像三女神-Wikipedia
宗像市-Wikipedia
宗像大社-Wikipedia
うけい-Wikipedia

参考:
日本の神様解剖図鑑
著者/編集:平藤喜久子
出版社:エクスナレッジ

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