兵家 孫子の兵法

44 孫子 十三篇 研究 12 -火攻編 火攻めって使う時なくない!?-

兵法書『孫子』の研究第12回。
今回は第十二篇火攻篇 について。
火攻めの種類や、火攻めをするときの注意点などが解説されています。
現代で火攻めする機会はあんまりないかなと思うんですが、
攻撃するときの心構えとしてヒントになることはたくさんあります。

孫武

まずは書き下し文、
次いで解説を加えた現代語訳を紹介します。


孫武

火攻篇 書き下し文

孫子曰わく、

凡そ火攻に五あり。

一に曰わく人を火(や)く、
二に曰わく積(し)を火く、
三に曰わく輜(し)を火く、
四に曰わく庫を火く、
五に曰わく隊を火く。


火を行なうに必ず因有り、煙火は必ず素より具(そな)う。

火を発するに時あり、火を起こすに日あり。
時とは天の燥(かわ)けるなり。
日とは月の箕(き)・壁(へき)・翼(よく)・軫(しん)に在るなり。
凡そ此の四宿は風の起こるの日なり。


凡そ火攻は、必ず五火の変に因りてこれに応ず。

火の内に発すれば、則ち早く之に外に応ず。


火の発して兵の静かなる者は、待ちて攻むること勿く、其の火力を極め、従う可くしてこれに従い、従う可からざるして止む。


火、外より発す可くんば、内に待つことなく、時を以てこれを発せよ。


火、上風に発すれば、下風を攻むること無かれ。
昼風は久しく、夜風は止む。


凡そ軍は必ず五火の変あることを知り、数を以て之を守る。

故に火を以て攻を佐(たす)くる者は明なり。
水を以て攻を佐くる者は強なり。
水は以て絶つ可くして、以て奪うべからず。

夫れ戦勝攻取して其の功を修めざる者は凶なり。
命(な)づけて費留(ひりゅう)と曰う。

故に曰く、明主はこれを慮り、良将はこれを修む。
利に非ざれば動かず、得るに非ざれば用いず、危うきに非ざれば戦わず。

主は怒りを以て師を興こす可からず。
将は慍(いきどお)りを以て戦いを致す可からず。
利に合して而ち動き、利に合せず而ち止まる。


怒りは復(ま)た喜ぶ可く、慍りは復た悦ぶ可し。
亡国は復た存すべからず、死者は復た生く可からず。
故に明主は之を慎み、良将はこれを警(いまし)む。
此れ国を安んじ軍を全うするの道なり。

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孫武

火攻篇 現代語訳

火を使った攻撃(火攻め)は5種類あります。

一つめは敵兵を焼き討ちすること、
二つめは敵の物資を焼き払うこと、
三つめは敵の輜重車(輸送車)を焼くこと、
四つめは敵の物資倉庫を焼くこと、
五つめは敵の部隊や宿営を焼く、または敵の行路を焼き払うこと。です。

火攻めを行うには必ず条件が揃わなくてはならず、また、必ず前もって準備をしなければなりません。

火攻めには適切な時期があり、火を起こすのに適切な日があります。
適切な時期とは空気が乾燥している時期で、適切な日とは月が二十八宿の箕(き)・壁(へき)・翼(よく)・軫(しん)にある日のこと。
この四宿は、風が起こる日なのです。

火攻めに際しては、5種類の変化に応じて臨機応変に行動する必要があります。

・味方の放火により敵陣内で火が上がれば素早く呼応して外から攻撃を仕掛ける。

・火が上がっても敵陣が静かならば、攻撃せずに待機し様子をみる。
火力が強くなり、燃える勢いを見極めた上で敵の動きに従って攻撃していい状況なら攻める。
攻撃すべきでない状況であれば止めて撤退する。

・敵陣の外から火をかけて攻撃できそうなら、内部から火の手が上がるのを待たず好機を捉えて火を放ってOKです。

・火の手が風上から上がったら風下から攻撃してはいけません。

・昼間は風が長く吹き続けるが、夜になると風が止むので注意する。

およそ軍は必ずこの5種類の火攻めの変化があることを把握し、原則を守って火攻めを行うこと。

火によって攻撃の助けとするのは聡明な知恵によるものであり、
水を攻撃の助けとするのは強大な戦力によるものです。
水攻めは敵を分断することができるが、敵から物資や食料、城などを奪うには至らない。

そもそも戦いに勝ち敵地を奪っても、ダラダラ戦いを続けるのは不吉なことで、
「費留」(無駄な費用を使って軍を留める)と言います。
そのため、賢明な君主はこのことを心がけ、良い将軍はこれをきちんと扱います。

利益にならなければ動かさず、得るものがなければ軍を用いず、危険が迫っていなければ敵と戦わないように。
君主は怒りに任せて軍を起こしてはならず、将軍も憤りから戦いを始めてはいけません。
利益に合致すれば軍を動かし、合致しなければ動かさない。
怒りは喜びに変わったり、憤りもまた喜びに変わり得ますが、滅んだ国は復活せず、死んだ人も生き返ることはありません。
なので、賢明な君主は戦いについて慎重であり、良い将軍は軽々しく戦いをしないもの。
これこそが国家を安泰にし軍を保全する方法なのです。

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孫武

火攻篇 解説とまとめ

そんなわけで火攻篇でした。
当時の攻撃方法としては火を使った火攻めと、水を使用した水攻めがありましたが、水攻めは堤防を築き敵を包囲したりと大規模になるので費用や労働力も莫大になります。
その割に敵の物資を奪えなかったりコスパはあんまり良くないとのこと。

対する火攻めの場合は水攻めよりも小規模なコストで敵の拠点や戦力を奪うことができ、物資を奪えいやすい点でも優れているようです。
どちらもやったことはないですが、なるほどと納得できるところはありますね。

火攻めを行うには適切な時期や日があるとの話で、月が二十八宿のうち箕・壁・翼・軫に通りかかる日は風が起こるのでこの日にしましょう。ということでした。
二十八宿とは、黄道に沿って天球を二十八等分した昔の正座のことです。
28に別れたエリアを月が通り、その位置で暦とするわけです。
詳しくはこちらをご参照ください。

ウィキペディア 二十八宿

火攻めのやり方や注意点について解説されたわけですが、
そもそも短期決戦で早く終わらせる手段であり、勝ってもダラダラ留まるのは無駄でしかありません。
戦い自体、利益にならない、得るものがないようであれば行わず、危険が迫ってやむを得ない状況でなければ敵と戦うものではありません。
怒りや憎しみの感情で戦いを始めるのはもってのほか。
怒りは収まりますが、国が滅んだり死んだりしたら終わり。
賢明なリーダーは慎重に、軽々しく戦いをしない。
それがチームやプロジェクトを健全に運営することなのです。

『孫子』十三篇

参考文献
・孫子 ー「兵法の真髄」を読む(中公新書) 渡邉義浩 著

孫子ー「兵法の真髄」を読む (中公新書 2728) [ 渡邉義浩 ]

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