兵家 孫子の兵法

43 孫子 十三篇 研究 11 -九地編 はじめは乙女の如く、後は脱兎の如く!-

2024年4月17日

兵法書『孫子』の研究第11回。
今回は 第十一篇 九地篇 について書いていきます。
戦場における9つの土地の形勢と具体的な戦い方、
また、戦いのコツについて述べます。

孫武

まずは書き下し文、
次いで解説を加えた現代語訳を紹介します。


孫武

九地篇 書き下し文

孫子曰わく、

用兵の法に、
散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、
衢(く)地有り、重地有り、圮(ひ)地有り、囲地有り、死地有り。

諸侯自ら其の地に戦うを散地と為す。
人の地に入りて深からざる者を軽地と為す。
我れ得れば即ち利、彼得るも亦た利ある者を争地と為す。
我れ以て往く可く、彼以て来たる可き者を交地と為す。
諸侯の地三属し、先に至れば天下の衆を得る者を衢地と為す。
人の地に入ること深く、城邑に背すること多き者を重地と為す。
山林・険阻・沮沢、凡そ行き難きの道なる者を圮地と為す。
由りて入る所の者隘(せま)く、従(よ)りて帰る所の者迂にして、
彼寡にして以て吾の衆を撃つ可き者を囲地と為す。
疾(と)く戦えば則ち存し、疾く戦わざれば則ち亡ぶ者を死地と為す。

是の故に散地には則ち戦うこと無く、
軽地には則ち止まること無く、
争地には則ち攻むること無く、
交地には則ち絶つこと無く、
衢地には則ち交を合わせ、
重地には則ち掠め、
圮地には則ち行き、
囲地には則ち謀り、
死地には則ち戦う。


所謂 古えの善く兵を用うる者は、
能く敵人をして前後相い及ばず、
衆寡相恃(たの)まず、
貴賎相救わず、
上下相収めず、

卒離れて集まらず、
兵合して斉(ととの)わざらしむ。
利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止まる。

敢えて問う、敵衆く整にして将(まさ)に来たらんとす。これを待つこと若何(いかん)と。
曰く、先ず其の愛する所を奪わば、則ち聴かん。

兵の情は速やかなるを主とす。
人の及ばざるに乗じて虞(おもんばか)ら不(ざ)るの道に由り、
其の戒めざる所を攻むるなり。

凡そ客(かく)たるの道、深く入れば則ち専らにして主人克たず。
饒野(じょうや)に掠むれば三軍も食に足る。
謹み養いて労すること勿く、気を併わせ力を積み、
兵を運(めぐ)らして計謀し、測る可からざるを為し、
これを往く所無きに投ずれば、死すとも且つ北(に)げず。
士人、力を尽す。

兵士は甚だ陥れば則ち懼(おそ)れず、往く所なければ則ち固く、
深く入れば則ち拘(こう)し、已(や)むを得ざれば則ち闘う。
是の故に其の兵修めずして戒め、求めずして得、約せずして親しみ、令せずして信なり。
祥(しょう)を禁じ疑いを去らば、死に至るまで之(ゆ)く所なし。
吾が士に余財なきも貨を悪(にく)むには非ざるなり。
余命なきも寿を悪むには非ざるなり。
令の発する日、士卒の坐する者は涕(なみだ)襟を霑(うるお)し、
偃臥(えんが)する者は涕 頤(あご)に交わる。
これを往く所なきに投ずれば、諸・劌(けい)の勇なり。

故に善く兵を用うる者は、譬えば率然(そつぜん)の如し。
率然とは常山の蛇なり。
其の首(かしら)を撃てば則ち尾至り、
其の尾を撃てば則ち首至り、
其の中を撃てば則ち首尾倶(とも)に至る。

敢えて問う、兵は率然の如くならしむべきか。
曰く、可なり。
夫れ呉人と越人との相悪むも、其の舟を同じくして済(わた)り、
風に遇(あ)うに当たりては、其の相い救うや左右の手の如し。
是の故に馬を方(つな)ぎて輪を埋むるとも、未だ恃むに足らざるなり。
勇を斉えて一の若くにするは政の道なり。
剛柔皆得るは地の理なり。
故に善く兵を用うる者は手を攜(たずさ)えて一人を使う若きは、已むを得ざらしむればなり。


将軍の事は、静かにして以て幽(ふか)く、正しくして以て治まる。
能く士卒の耳目を愚にして、之をして知ること無からしむ。
其の事を易(か)え、其の謀を革(あらた)め、人をして識ること無からしむ。
其の居を易え、其の途を迂にし、人をして慮ることを得ざらしむ。
帥(ひき)いて之と期すれば、高きに登りて其の梯を去るが如く、
帥(ひき)いて之と深く諸侯の地に入りて其の機を発すれば、
船や焚き釜を破り群羊を駆るが若し。
駆られて往き、駆られて来たるも、之(ゆ)く所を知る莫(な)し。
三軍の衆を聚め、之を険に投ず。
此れ将軍の事と謂うなり。
九地の変、屈伸の利、人情の利は、察せざる可からざるなり。

凡そ客たるの道は、深ければ則ち専らに、浅ければ則ち散ず。
国を去り境を越えて師する者は絶地なり。
四達する者は衢地なり。
入ること深き者は重地なり。
入ること浅き者は軽地なり。
背は固にして前は隘なる者は囲地なり。
往く所無き者は死地なり。

是の故に散地には、吾、将に其の志を一にせんとす。
軽地には、吾、将にこれをして属(つづ)かしめんとす。
争地には、吾、将に其の後を趨(うなが)さんとす。
交地には、吾、将に其の守りを謹しまんとす。
衢地には、吾、将に其の結びを固くせんとす。
重地には、吾、将に其の食を継がんとす。
圮地には、吾、将に其の塗(みち)に進めんとす。
囲地には、吾、将に其の闕(けつ)を塞がんとす。
死地には、吾、将にこれに示すに活(い)きざるを以てせんとす。
故に兵の情、囲まるれば則ち禦(ふせ)ぎ、已むを得ざれば則ち闘い、過ぐれば則ち従う。

是の故に諸侯の謀を知らざる者は、預(あらかじ)め交わること能わず。
山林・険阻・沮沢の形を知らざる者は、軍を行(や)ること能わず。
郷導を用いざる者は、地の利を得ること能わず。
四五の者、一を知らざれば、覇王の兵には非ざるなり。


夫れ覇王の兵、大国を伐つは則ち其の衆聚まることを得ず、
威、敵に加わうれば則ち其の交を合することを得ず。
是の故に天下の交を争わず、天下の権を養わず、己れの私を信(の)べて、威は敵に加わる。
故に其の城は抜くべく、其の国は隳(やぶ)るべし。
無法の賞を施し、無政の令を懸くれば、三軍の衆を犯(もち)うること一人を使うが若し。
これを犯うるに事を以てし、告ぐるに言を以てすること勿かれ。
これを亡地に投じて然る後に存し、これを死地に陥れて然る後に生く。
夫れ衆は害に陥りて然る後に能く勝敗を為す。
故に兵を為すの事は、敵の意を順詳するに在り。
敵に并(あわ)せて向かうを一にし、千里にして将を殺す。
此れを巧みに能く事を成す者と謂うなり。

是の故に政挙がるの日は、関を夷(とど)め符を折りて其の使を通ずること無く、
廊廟の上に厲(きび)しくして以て其の事を誅(せ)む。
敵人開闔(かいこう)すれば必らず亟(すみや)かにこれに入り、
其の愛する所を先きにして微(ひそ)かにこれと期し、
践墨(せんぼく)して敵に随(したが)いて以て戦事を決す。
是の故に始めは処女の如く、敵人戸を開き、後は脱兎の如くにして、敵拒(ふせ)ぐに及ばず。



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孫武

九地篇 現代語訳

戦闘を行う原則に、
散地があり、軽地があり、争地があり、交地があり、
衢(く)地があり、重(ちょう)地があり、圮(ひ)地があり、囲地があり、死地がある。

諸侯が自国領内で戦う場合、その戦場は散地となります。
敵の領地に入ってもで深く入ってない場合は軽地となります。
味方に奪い取れば味方が有利になり、
敵が奪えば敵が有利になる土地は争地になります。
こちらから行くことができ、敵もこちらに来れる土地は交地となります。
諸侯の領土と三方が接し、先に到着すれば天下の人々を掌握できる土地は衢地となります。
敵の領地に深く入り、敵の都市を背中に戦わなければならない土地は重地となります。
山林や険阻、湿地帯といった軍を進めにくい土地は圮地になります。
入って進む道が狭く、退却するには回り道しなければいけない、
敵が少人数でも味方を撃破できるような土地は囲地となります。
迅速に必死で戦えば生き残れるが、そうでなければ全滅するような土地は死地となります。

なので、
散地では戦ってはならず、
軽地ではとどまってはならず、
争地では(敵が先に占領していれば)攻めてはならず、
交地では部隊間の相互連絡を絶ってはならず、
衢地では近隣諸侯と同盟を結び、
重地では食料や物資を掠奪し、
圮地では素早く通過し、
囲地では策略を巡らし、
死地では決戦あるのみです。

いわゆる昔の戦上手は、敵の前軍と後軍の連携を断たせ、
大部隊と小部隊が互いに支援できないようにさせ、
身分の高い者と低い者を助け合えないようにし、
上官と部下が連携できないようにし、
敵兵士を離散させて集まらないようにし、
集まっても戦列が整わないように仕向けました。
(敵の状況が)こちらに有利な状況であれば動き、
こちらが不利な状況であれば戦闘開始せずとどめるのです。

ここでクエスチョン。
●敵の兵力が多く、整然と整って攻めてこようとしています。
これをどのように迎え撃てばいいでしょうか?
●答え、
まず敵の大切にしているものを奪います。
そうすれば、こちらの言うことを聞くでしょう。

戦いの要は迅速であることを旨とします。
敵の隙に乗じ、敵の思いもよらない方法で、警戒していないところを攻める。

敵国に入っての攻撃の道理として、
深く敵の領地に侵入して戦うときも、団結していれば敵も勝てないのです。
敵の豊かな土地から食料を略奪すれば全軍の食料も間に合います。
慎重に兵を休ませ無駄に疲労させず、
士気を高めて力を蓄える、
計略を巡らせて軍を動かし、
敵が思いもよらない作戦を実行する。
軍を敵と戦うしかないところに投入すれば、
兵士は死んでも逃げず、必死の覚悟での戦いが実現されるのです。
兵士達も死力を尽くすことになります。
兵士達は、危険な状況に陥ればかえって恐怖心を忘れ、
行き場のない状況になると決死の覚悟を固めます。
深く敵領に入りこむと一致団結し、
戦うしかない状況になると必死に戦います。

つまるところ、兵士達は教えなくとも自ら規律を守り、
求めなくても力を発揮し、
軍紀で縛らなくてもお互いに親しみ合い、
命令しなくても信頼を裏切らないのです。
占いや迷信を禁止し兵士の心に疑念を抱かさなければ、
死ぬまでよそに心を奪われることはありません。

我が方の兵たちが余分な財貨を持たないのは財貨を持つことを嫌っているからではありません。
命さえ投げ出すのは長生きすることを嫌っているからではありません。
決戦の命令が下された日、
兵士で座っている者は涙で襟を濡らし、
横たわっている者は、涙が頬を伝って顎まで流れます。
こんな兵士たちも、他に行き場のないところへ投じると、
専諸や曹劌※のように勇敢な兵士になります。

専諸(せんしょ)春秋時代の勇者 呉の公子 光 に仕え、呉王 僚 を刺殺した。
曹劌(そうけい)春秋時代の将軍 魯の荘公に仕え、斉との和睦の際に活躍した。

戦に巧みな者は例えて言えば「率然」のような者です。
率然とは常山に住む蛇のことで、
頭を攻撃すると尾で反撃し、尾を攻撃すれば頭が反撃する。
お腹を攻撃すると、頭と尾が反撃してくるのです。

ここでもう一度クエスチョン。
●軍隊を率然のように動かすことができるでしょうか?
●答え
できます。
そもそも、お互いに憎み合って仲の悪い呉の人と越の人も、
同じ船に乗り合わせ、強風に遭った場合に互いに助け合う様は左右の手のようです。

馬を並べてつなぎ戦車の車輪を埋めて陣を固めても、まだ頼りにするには十分ではありません。
兵士たちを奮い立たせ、統一させるのは将軍の政治指導によるものなのです。
強い者も弱い者も皆が存分の働きをするのは地勢の道理によるもの。
戦上手な者は、
手を取って一人の人を使いこなすかのように軍を自在に動かしますが、
それはそうならざるを得ないように仕向けるからです。

将軍たる者の務めは表面は物静かで奥深くを見せず、厳正に処理することで軍隊を統治すること。
兵士の耳目を誤らせ、将軍の言動が兵士に読まれないようにする、
軍の行動目標、作戦計画を変えても兵士たちに意図を気づかせないようにする、
駐屯地を変えたりわざと遠回りして、兵士たちに真の目的地を推測されないようにするのです。

軍を率いて決戦の時がきたら、あたかも高い所に登らせてからハシゴを外すように、
率いて諸侯の領地深くで決戦する時は、乗っていた船を焼き払い釜を壊し、
羊の群れを追い立てるように兵を追い立てて、行くも来るもどこへ向かっているのかわからないようにする。
こうして全軍の兵を集めて危険な場所に投じること。これが将軍たる者の務めです。

九地の変化や軍の進撃・撤退、人情の道理は十分に理解しわきまえなければいけません。
およそ敵国に侵入して攻撃する軍の原則は、深く侵入すれば兵士たちは団結し、浅ければ逃げ帰ってしまいます。
自国を出て国境を離れて出兵した地は「絶地」、
道が四方に通じている地は「衢地」、
敵国に深く侵入した地は「重地」、
浅く侵入した地は「軽地」、
背後険しく前は狭い地は「囲地」、
行き場なく進めない地は「死地」となります。

そのため、「散地」では兵士の志を一つにまとめ、
「軽地」では部隊間の連係を密に、
「争地」では敵の背後に回る。
「交地」では念入りに守備を固める、
「衢地」では周りの諸侯と同盟し結束を固める、
「重地」では食料の補給を確保する、
「圮地」では素早く通り過ぎるようにする、
「囲地」では味方の逃げ道を塞いで必死に戦わせる、
「死地」では戦わなければ生き残れないことを示すのです。
兵士としては包囲されれば防御し、やむを得なければ戦い、切羽詰まれば将軍の命令に従うのです。
このため、諸侯たちの胸の内を知らなければ前もって親交を結ぶことができず、
山林や険阻、湿地帯の形を知らなければ軍を進めることができず、
その土地の道案内を用いなければ地の利を得ることができない。
四五(四+五=九地の利害)、一つでも知らないようでは覇王の兵ではありません。
そもそも覇王の兵は、大国を討伐すれば討伐された国は兵を集めることができず、
敵を威圧すれば敵は他国と同盟することができません。
覇王は外交を諸侯と争ったりせず、天下の諸侯に権力を養わせず、自分の思う通りに振る舞っているだけで自然と威勢を敵に加えていく。
そのため、敵の城を攻略することができ、敵国を滅ぼすことができるのです。
軍法にない褒賞を与え、軍政にない命令を出せば全軍の兵を一人を使うように動かすことができます。

軍を動かす時は、命令するだけにして理由を詳しく言葉で告げてはいけないし、利益だけを告げて害になることは告げてはいけません。
全滅するような状況に放り込めば存続し、死地の状況に放り込めば生き延びる。
兵士たちは窮地に陥ってこそはじめて死力を尽くして奮戦するものなのです。

このため、戦いを行う上で大切なことは、敵の意向に従いつつ敵の意図を十分把握すること。
敵軍に対して、まとめて一つになって向かわせれば千里かなたの敵将も打ち取ることができます。
これを巧みに戦いに勝つというのです。

宣戦布告の日には関所を封鎖して通行手形を破棄して敵の使節の往来を禁じる、廊廟に集まり厳しく軍議を行って作戦を立てます。
敵が隙を見せたら必ず急いで侵入し敵の要所に先制攻撃をかけ、
密かに敵に近づいて敵の行動に合わせて決戦し勝敗を決するのです。
そのため、最初は乙女のように従順におとなしく振る舞って敵を油断させておいて、
敵が隙を見せた後は罠から逃げるウサギのように素早く攻撃すれば、敵は防ぐことができないのです。

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孫武

九地篇 解説とまとめ

さてさて、今回は長かったのですが、まとめてみます。
まず、タイトルの「九地」とは?というところですが、
以下の9種類です。

散地:兵士達が、故郷が恋しくなって逃げ(離散し)やすい土地
軽地:兵士達が、浮ついた気持ちになりやすい土地
争地:敵と奪い合位になる土地
交地:往来が便利で敵味方が交錯する土地
衢(く)地:あちこち四方八方に通じた土地
重地:兵士達の気持ちが重くなりやすい土地
圮(ひ)地:軍を進めにくい土地
囲地:囲まれた土地
死地:敗北しやすい、やべー土地


いくつかは以前紹介した、第八篇九変篇  にも出てきましたね。
特に普通に読めない漢字のところです。

散地は自国領内ですが、兵士達はまだ頑張れば帰れるくらいの距離なので逃げて家に帰る。

軽地は敵領に入ってはいるものの、まだそこまで深く入っていないので帰れるレベル。
家に帰りたいのでそわそわして気持ちが浮つきます。

争地は奪えば有利ですが奪われると不利なので、敵味方で奪い合いになる土地。

交地は敵も味方も行き来ができて交錯する土地。

衢地は諸侯の領土と三方が接してあらゆる方向に行き来できるので、先に押さえることができれば非常に有利な土地です。

重地は気が重い土地とのことですが、「敵の領地に深く入り、敵の都市を背中に戦わなければならない」とのことで絶対アカンやつです。

圮地は足場が悪く軍を進めにくい土地で、山林や険しい地形、沼沢や湿地帯といった軍を進めにくい土地。
九変でも、「攻撃を受けると対応できないから宿営するな」とのことでした。

囲地は囲まれた土地。進むに狭く退却するにも迂回が必要というような土地は、少人数の敵であっても撃破されてしまいます。

死地は死に物狂いで必死こいて戦えば生き残れるものの、そうでなければ全滅するような土地。
わざわざ「死地」といっているくらいなんで、これはもうダメですね。
そもそも「戦わないに越したことない」「勝てる戦いしかしてはいけない」といっている孫子なので、絶対に避けるべきシチェーションになります。

各地での対応方法は、
逃げ帰れる散地で戦うと兵士が嫌になって逃げちゃうので戦ってはならず、
まだ帰れる軽地では、とどまらずに帰れないところまで進んでしまう。
争地で敵に先を越されているなら、気持ちを切り替えて攻めず、
交地では敵味方が交錯するので部隊間の連絡を密にする。
衢地では近隣諸侯を抱き込んで、あたり一帯を押さえてしまう。
重地では気が重くなってしまうので、
敵の食料や物資を掠奪することで敵の勢力を削ぐ&兵士のテンションを上げるようにします。
(モラルがアレな感じですが、戦いなのと時代が時代なので。)
圮地では消耗が激しく攻められるとピンチになるので上記の通りさっさと通過する。
囲地もさっさと通過しないといけないのですが、
圮地以上に狙われるとピンチなので、策略を巡らして生き延びて脱出するために頭を使います。
死地にはまってしまった場合は、もう腹をくくって決戦あるのみ。必死でなんとかする感じです。

昔の戦上手が運用したような戦闘の理想像としては、
敵の連携を邪魔して各部隊が相互に支援できないようにし、
敵の上官と部下の関係に不信感を作ってうまく機能しないようにしたり、
敵兵を離散させ、集まっても戦列が整わないように謀略で仕向ける。
相手が万全で弱点がなければ、
弱みを握ったり大切なものを奪って弱点を作ってそこを攻める。

弱点を攻めるのは卑怯ではなく戦術です。
敵の戦力を削いで自分が有利な状態を作ります。
そこまでの工作をした上で、有利な状況であれば動き、不利なら戦わないのが鉄則。

人の及ばざるに乗じて虞ら不るの道に由り、其の戒めざる所を攻むるなり。

とあるように、行動の迅速を旨として、敵の隙に乗じて敵が思いもよらない方法で警戒してないところを攻めるのです。
まあ、これがすんごい難しいのですが、狙いどころと意識しておくと強いです。

戦い方の方針はなかなかシビアな感じですが合理的です。
泣くほど嫌がってる人たちを働かせるには、帰りたいモードになる前に「終わらな帰れへんで。」という状況にしてしまえということ。
ただし、ただのブラックではなく福利厚生や待遇はちゃんとしますし、働きやすい状況への整備、根回しもちゃんとやらないといけません。
勝てる状況にバックアップした上で、兵士達に必死の覚悟で戦わせるわけですね。
ただし、いちいち説明するのではなくある程度は意図を気づかれないようにせず、指示だけを与えるべきと言っています。
「そういうルールなんで。」と思考停止して作業させるほうが早いこともありますから。
色々と部下に厳しめな感じですが、業務のルーティーン化や習慣化で仕組みにしてしまう形に通じるものがあります。

こんな感じで自軍の兵士をコントロールして、まるで一人を動かすように全軍を統率してこそ、思うがままに動かせるというものなのです。

『孫子』十三篇

参考文献
・孫子 ー「兵法の真髄」を読む(中公新書) 渡邉義浩 著

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-兵家, 孫子の兵法