新しくはじまりました、
気になる日本文学シリーズ。
日本のクラシックな文学もたくさんありますが、何でもかんでもというわけではなく、
ウチのブログのテーマが、
東洋哲学や神話について紹介するお絵かきブログ
ですので、
そんな感じでウチ好みのセレクトで、
ウチなりの解説を交えつつ不定期に語っていきます。
第一回目は、
明治の文豪、森鴎外の「寒山拾得」です。
ほら、もう早速セレクトがアレでしょ。
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だってお金がほしいので。
●作者 森鴎外について
まずは、作者の森鴎外について紹介します。
森鴎外は日本の明治・大正期の小説家、評論家、翻訳家、教育者、陸軍軍医(軍医総監=陸軍中将相当)、官僚(高等官一等)。
位階勲等は従二位・勲一等・功三級、医学博士、文学博士。
肩書多いな!
石見国津和野(いわみのくに つわの)※現在の島根県鹿足郡津和野町 出身。
代々津和野藩の典医を務める森家に嫡男の 森 林太郎(もり りんたろう)として生まれます。
林太郎が本名なので、「鴎外」はペンネームです。
超クールですね。
森家では林太郎の祖父と父を婿養子として迎えているため、久々の跡継ぎ誕生でした。
幼い頃から非常に優秀で「論語」「孟子」といった漢学書やオランダ語などを学び、
当時の記録では、9歳で15歳相当の学力を持っていたとされ、家族と周囲から将来を期待されることになります。
小3の齢で、中3の勉強できるってどんだけですよね。
1872年(明治5年)、廃藩置県などをきっかけに10歳で父と上京。
引き続き勉強に励み、
実年齢より2歳多くサバを読んで、満11歳10ヶ月で、現在の東大医学部の前身、第一大学区医学校・東京医学校医学本科予科に入学、
そしてお察しの通り、優秀な成績で卒業します。
大学卒業後、陸軍軍医になり、陸軍省派遣留学生としてドイツでも軍医として4年過ごし、
帰国後、文芸雑誌を創刊して文筆活動。
その後、日清戦争出征や小倉転勤などにより創作活動から一時期遠ざかったりもしますが、
「スバル」創刊後に「ヰタ・セクスアリス」「雁」などを発表。
陸軍大将 乃木希典の殉死に影響されて「興津弥五右衛門の遺書」を発表後、
「阿部一族」「高瀬舟」など歴史小説や史伝なども執筆しました。
陸軍引退後は宮内省に転じ、
帝室博物館(現在の東京国立博物館・奈良国立博物館・京都国立博物館等)総長、
図書頭を死去まで務めたほか、
帝国美術院(現:日本芸術院)初代院長なども歴任。
とまあ、華々しい経歴をお持ちのスーパーエリートです。
その一方、「これからは日本人も国際化せな!」と子どもたちに西洋風の名前をつけて、元祖キラキラネームとか言われたり、
細菌学、衛生学を究めて以来、潔癖症になりフルーツでも加熱しないと食べられなくなっちゃったり、
風呂は細菌の温床だ。と湯船に浸かるのが嫌になっちゃったり、
お酒が飲めず大の甘党で、独自に考案した「饅頭の茶漬け」というキモい料理を好んだり、
宮中のデザートで出されたキャラメルやチョコレートなどをそっと軍服に隠し入れて、子供たちへの土産にしたりと可愛いエピソードがあります。
ちなみに、この時代、家庭では「男子厨房に入らず」ですが、
鴎外、一種類だけ料理ができて、それは
「玉子をどろどろに柔らかく煮る」
で弁当のおかずによく作ったそうです。
なお、お酒を入れすぎてお酒臭い時もあったんだとか。
●寒山拾得 前編
そんな森鴎外が書いた作品、今回のテーマの「寒山拾得(かんざんじっとく)」は、1916年(大正5年)1月に「新小説」に発表された短編小説。
「寒山拾得」とはなんぞやといいますと人名であり、中国,唐代の隠者・詩人である寒山と拾得のこと。
既成の仏教界や詩壇からはみ出した孤高な隠者として300余首のも詩を残した伝説的な人物で、その伝承を下敷きにしています。
禅画の題材としてもメジャーで特に有名な顔輝作の「寒山拾得図軸」は、足利将軍家・織田信長・石山本願寺に伝来したそうです。
顔輝-wikipedia
最近では現代美術家・横尾忠則さんが独自の解釈でシリーズとして手掛け、展覧会も開催されました。
鴎外の「寒山拾得」は短編というだけあってコンパクトなので30分くらいで読める読みやすさ。
字を読むのが苦手な方は、YouTubeとかに朗読の動画もあるのでそちらが良いと思います。
おすすめは、「情熱大陸」でおなじみの
ナレーター窪田等さんの動画。
本当にすばらしい、まさに珠玉です。
芥川龍之介の「寒山拾得」も聞けちゃうお得さも良き。
わくわく閭丘胤。
昔の中国、唐の貞観(じょうがん)の頃、
現在の浙江省台州市あたり、台州というところの主簿として赴任した 閭丘 胤(りょきゅう いん)。
この「主簿」という役職、今の県知事的なお仕事で、郡の長官の「太守」や州のトップである「刺史」と同じようなポジションです。
ちなみに、鴎外は「閭 丘胤」としていますが、実際は「閭丘」が正解だそうです。
さて着任して三日目のお話、
彼はもともと、土埃にまみれて水の濁った長安にいましたが、
台州に来て中国中央の肥えた土を踏み、澄んだ水を飲めることになってご機嫌です。
赴任してからというもの、たくさんの部下も謁見に訪れ、あわただしい中に地方長官の威勢の大きいことを味わい意気揚々でした。
そんな閭丘胤さん、今朝は早起きして
天台県の国清寺に出かける予定。
なぜなら、長安にいた頃から
「台州に来たら絶対行こう。」
と決めていたからです。
頭痛が痛い 閭丘胤。
さてさて何の用事があって閭丘胤が国清寺へ行きたいかといいますと、
まだ長安にいた頃のことです。
台州主簿の任命を受け、これから任地へ旅立とうとしていた閭丘胤でしたが、持病のリューマチにより、
頭痛がとっても痛たたた。
なお、「頭痛が痛い」という使い方は間違っているという方もいますが、
そんなもん、もちろんわかったうえで使っています。
これはしんどい、旅立ちの日を延ばさなくてはなるまいか。と思っていた時、
お手伝いさんから、
「ただいま、ご門の前へ乞食坊主がまいりまして、ご主人にお目にかかりたいと申しますがいかがいたしましょう?」
とのこと。
頭が痛すぎて、こちとらそんなどころじゃねんだよ。と思いつつ。
「とにかく逢ってみるから、ここへ通せ」
と言いつけます。
閭丘胤、科挙に応ずるために勉強を始めたばかりで
仏典を読んだこともなく、老子を研究したこともなかったのですが、
僧侶や道士というものに対しては、なぜということもなく尊敬の念を持っていました。
自分が会得していないものに対しては
「盲目の尊敬」を持つ男、それが閭丘胤。
坊主と聞いては会わないと失礼だと思ったのでした。
豊干(ぶかん)登場。
閭丘胤の前に現れたのは一人の背の高い僧。
垢がついてやぶれた法衣を着、長く伸びた髪を眉の上で切ったざんばら髪。
手には鉄鉢を持って黙って立っています。
閭丘胤が、
「わたしに逢いたいと言われたそうだが、なんのご用かな」
と問いかけると僧は、
「あなたは台州へおいでなさることにおなりなすったそうでございますね。
それに頭痛に悩んでおいでなさると申すことでございます。
わたくしはそれを直して進ぜようと思って参りました」
と答えます。
僧が言うには、
あなたの頭痛は幻だ、ただ清浄な水が一杯あればあれば、おまじないで直してあげましょう。とのこと。
閭丘胤はあんまり医学とか気にしないタイプの人で、
なんとなくえらそうに見えるお坊さんの態度に
「なんか説得力あるやん。」と思ったのと、
まあ、水一杯でするまじないなら、
ミスっても大したことはないやろ。と思ったので、
「そしたらいっちょ。」とお願いすることにしました。
おぼうさんのちからすげー。
閭丘胤はお手伝いさんに命じて汲みたての水をもってきてもらい、
僧はそれを受け取って、胸に捧げ水を口にふくむと
突然ふっと閭丘胤の頭に吹きかけました。
閭丘胤もこれにはびっくりで冷や汗が出ましたが、
あら不思議、頭痛はどこへやら。
お坊さんは静かに鉢の水を流し、
「そんならこれでお暇をいたします」
と言うや否や、くるりと背中を向けて戸口の方へ。
閭丘胤はお礼をしたいと呼び止めますがそれには及ばぬというお坊さん。
「それでは、あなたはどちらのお方か、それを伺っておきたいのですが」
と尋ねると、
「台州・天台山国清寺の豊干(ぶかん)」
と名乗ります。
閭丘胤は豊干に、これから行く台州で、
会いに行ってためになるような、えらい人はおられませんかと訊きますと、
「国清寺に拾得(じっとく)と申すものがおります。実は普賢でございます。
それから寺の西の方に、寒巌という石窟があって、
そこに寒山(かんざん)と申すものがおります。実は文殊でございます。」
と豊干はこたえ、ついと出て行きました。
台州には、普賢菩薩の化身の拾得と文殊菩薩の化身の寒山がいる。
オラ、わくわくすっぞ!
というわけで、
閭丘胤は、台州に来たら
絶対国清寺いくもんね!
と決心していたそうです。
そんな因縁があったよ。というわけで今回はここまで。
次回もよろしくおねがいします。
なお、このブログは、気になったことを調べ、学んだ内容とイラストを紹介するお絵描きブログです。
ソースは主にWikipediaなどになりますので、学術研究ではなくエンターテイメントとしてお楽しみください。
興味のきっかけや、ふんわりしたイメージ掴みのお手伝いになればうれしいです。
青空文庫 寒山拾得-森鴎外
森鴎外-wikipedia
寒山拾得-wikipedia
台州 (浙江省)-wikipedia
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