歴史 気になる事柄を学ぶシリーズ 神話・伝説

101 伝説のチームを紹介する試み 四神(ししん)番外編2・四霊編② 麒麟

ごきげんよう、ハゲと天パです。

「伝説のチームを紹介する試み」。
第101回というわけで新しいスタートの節目は、四神の中央を司るもう一人にして、
伝説の瑞獣「四霊」の一角、麒麟を紹介します。




四神+黄龍or麒麟を語るのに外せないのが、
「万物は火・水・木・金・土の5種類の元素からなる」という考えである五行説
古代中国の自然哲学の思想で、5種の元素は下図のような相関関係。

五行は方位とも関連があり、
東の青竜が「木」、南の朱雀が「火」、西の白虎が「金」、北の玄武が「水」に対応。

川、湖、大道、山など、土地のランドマークを、五行の気をもつ四神に見立て、都の選地など都市計画にも利用されました。
うまく四神に囲まれた土地はパワーを持ち繁栄するという、いわゆる四神相応です。

四神が「木」「火」「金」「水」の気を司り、
残る「土」を司るのが、黄龍もしくは麒麟。
方位では中央を担当。
その場合は、五神・五獣となります。

黄龍と麒麟




麒麟

麒麟とは。

麒麟(きりん、拼音: qílín チーリン)は、
中国神話において、良きことが起こるしるし「瑞兆」として姿を現す動物「瑞獣」。
瑞獣もいろいろおり、伝説の生き物とは限りませんが、
応龍、麒麟、鳳凰、霊亀の4種が代表で「四霊」と呼ばれ、麒麟はその一角です。 



四霊は4分類された生物群の長とされており、
麒麟は毛虫(もうちゅう)の長とされています。

「毛虫」という字から日本人としては違和感を感じますが、
この「虫」は「蠱」の略字。
「蟲」は、もともと、人間を含めて「すべての生物」という意味合いで、
生きとし生きるものを示していたそうですがかなり早い時期に「蟲」は画数が多いので書くのしんどいわ。と、「虫」に略され始めました。

ただし、「虫」という漢字も別で存在しており、こちらはヘビをかたどった象形文字だったのですが、
「蠱」と「虫」は混用され、時とともに「蟲」本来の生物全般を指す意味は失われ、「蠱」や「虫」は、ヘビ類やそれより小さきものに対して用いる文字へと変化していったそうです。
いまでは一般的なムシは「虫」やばめのムシは「蠱」というイメージですかね。

脱線しますが、るろ剣終盤に出てくる暗器使いのキャラ、乙和瓢湖の襟飾りに見せかけた暗器「六道蠱」
天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道の「六道」における、「すべての生きとし生けるもの」という意味になるので、
めちゃめちゃしびれるネーミングです。
武器としては名前負けがハンパないですが。
(今回の流してもらって大丈夫ポイントです。)

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話を戻して、人以外の哺乳類・毛をもつ獣類のことを毛虫と呼ぶそうで麒麟はその長。
獣の王というわけで白虎ちゃんの師匠です。


なお、五行に基づく分類では、

魚や爬虫類のように鱗を持つ鱗虫、
鳥のように羽を持つ羽虫、
獣類のように毛をもつ毛虫、
甲殻類のように固い殻や甲羅をもつ甲虫

の4つのカテゴリに分類され、それぞれ360種類いるとのこと。
これらそれぞれの軍団の長が四霊です。

鳥類の長である、四霊のチームメイトの鳳凰としばしば対に扱われ、
前漢の皇族・学者だった淮南(わいなん)王の劉安が編著した哲学書、「淮南子」(わいなんし・えなんじ)によると、

応竜が建馬(けんば)と蜚翼(ひよく)を生み、建馬は麒麟を、麒麟は諸獣を生んだ。
蜚翼は鳳凰を、鳳凰は鸞(らん)鳥を、鸞鳥が諸鳥を生んだ。

としており、麒麟と対応するのは正確には鳳凰から生まれた鸞(らん)鳥ということになります。

麒麟のおばあちゃんが応龍で、おばさんが鳳凰ということになりますが、
キャラ設定上、血縁関係を出すとややこしくなるので、流してもらって大丈夫です。

ちなみに「麒麟」という字は、「麒」がオスで「麟」がメスを表すとされたりもし、
これは、鳳凰にもいえる特徴。
まあ、通常は「麒麟」と雌雄同体で表記されます。




麒麟の姿は鹿に似た一角獣または二角獣で、大きく背丈は5mとでっかい。
背毛は五色に彩られ、毛は黄色く、全身が魚の鱗で覆われている。
また、顔は龍に似て、蹄は馬、尾は牛のものを持っているそうです。

角については、古くは一本角、もしくは角の無い姿で語られましたが、
後世では二本角や三本角で描かれる例もあるそう。
なお、その角は「肉に覆われた角」だそうで、調べたら必ず書かれていたので重要なんでしょうね。

その性質は非常に穏やかで優しく、足元の虫や植物を踏むことさえ恐れるほど殺生を嫌う。
あらゆる命を慈しみ、思いやりを持った動物なので“仁獣”とも表現されるんだとか。
なるほど、角で生き物を傷つけないように、肉でコーティングしてるんですかね。


そういったわけで麒麟は「天下泰平のしるし」ともされています。
少し前の大河ドラマで、「麒麟がくる」ってありましたね。
とても好きでした。
私も今後、反乱を起こされたときには「是非もなし。」って言いたい。


神聖な幻の動物なので、動物を捕らえるための罠にかけることはできず、
麒麟を傷つけたり、死骸に出くわしたりするのは、不吉なこととされます

中国古代の礼(れい)の規定およびその精神を記した儒家の経典「礼記」(らいき)では、
王が仁のある政治を行うときに現れる神聖な生き物であるとし、
鳳凰、霊亀、応竜と共に「四霊」と総称するのは礼記由来です。


孔子によって纏められたとされる古代中国の歴史書「春秋」によると、
聖人不在で泰平とは言えない時代に謎の麒麟が現れましたが、
捕らえた人々が麒麟を知らず、気味悪がって打ち捨ててしまったそう。

孔子がそのUMAを見た時に麒麟だと気づき衝撃を受けますが、
人々が神聖な生き物を気味悪がって恐れる状況に「だめだこりゃ。」と嘆き、筆をおいてしまったといいます。

春秋はこの記事をもって記述が打ち切られており、
後世には「物事あるいは人生の終わり」のことを「獲麟」(かくりん)と言う言葉で用いられるようになりました。
使ってみたい言葉が増えましたね。


麒麟

麒麟の種類とキリン。


そんな獣の王である麒麟、実は色違いで5種類います。
チョコボかな。

青いものは聳孤(しょうこ)、赤いものは炎駒(えんく)、白いものは索冥(さくめい)、黒いものは角端(かくたん)、黄色いものを麒麟と言うそうです。
もうわかりましたよね。そう、五行の色ですね。


また、同じ読みのキリンといえば、動物園でおなじみのキリンさんがいますね。

キリン(学名: Giraffa camelopardalis ギラファ・カメロパルダリス)は、
哺乳綱偶蹄目(鯨偶蹄目とする説もあり)キリン科キリン属に分類される偶蹄類。
構成や個体数が変動する繋がりの緩い10~ 20頭程度の群れで生活し、アフリカの中部や南部のいくつかの地域に生息。

背が高い動物というイメージがあるキリンですが、
角先端までの高さがオスは4.7 - 5.3mで体重は800~1,930kg、
メスは3.9 - 4.5mで体重550~1,180キログラムとなっています。

橙褐色や赤褐色の体色を持ち、黒と淡黄色からなる斑紋が入るのが特徴。
この斑紋は個体によって異なりますが、非常に稀な例で斑紋が無い個体が生まれる事もあるそう。
日本でも上野動物園にいた「リョウコ」と「トシコ」は無斑紋だったといいます。
ちなみに種小名camelopardalisは、「ヒョウ模様のラクダ」の意味です。

キリンといえば、とても長い首が自慢ですが、実は多くの哺乳類と同様に頸椎の数は7個でそれぞれが大きく長くなっています。
頭と長い首は発達した筋肉と靭帯で支えられ、血管にも弾力性があり、頭を下げた時の急な血圧の変化にも対応することができるんですって。


食性は植物食で、枝から葉だけをしごくのに適した2~3又に分かれた犬歯を持ち、長さ約45cmに達する舌と柔軟性のある唇で、主食になるアカシアなどトゲがある木でも、葉を上手により分けて食べます。
なお、新鮮であれば、葉っぱから摂る水分のみで数か月は水を飲まなくても生きていくことができるんだそう。
なので、アフリカに住む他の草食動物と異なり、乾季になっても移住をしません。
ちなみに果実なども食べることもあるそうですが、時には小鳥などの小動物を食べることでタンパク質を接種するそうです。


通常は直立したまま休息や睡眠を行い、
諸説ありますが、1日の睡眠時間は一時間程度とショートスリーパー
眠りが深くなった姿勢をとるのは1日に3~4分、長くても10分くらいなんですって。


キリンの天敵は主にライオン。
生後3か月以内での子キリンの場合、ハイエナや・ヒョウ・リカオンも脅威になります。
幼獣が襲われた時には、母親が蹴りで応戦しますが、この蹴りによって、まれにライオンを殺すこともあるそうです。
強い。ゴクリ。
意外ですが人間の食用とされることもあり、
古代イタリアのポンペイでは、住民がキリンやフラミンゴの肉を食べていたんだとか。
また、キリンの個体数が多い国では、今でも個体数調整のため、キリンを狩猟して食べることがあるそうです。


中国では「明成祖実録」よりベンガルの遣使からキリンを麒麟として、
永楽帝に献上された記録が残っており、永楽帝もキリンを気に入ってこれが伝説の麒麟だ。としたそう。

ちなみに日本語のみならず朝鮮語でも、伝説の麒麟にちなんでこの動物をキリンと呼ぶそうです。
だがしかし、中国語でキリンは「麒麟」ではなく「長頸鹿」(長い首の鹿)です。


ところで、日本では2021年の時点でキリンは特定動物に指定されており、愛玩目的での飼育が禁止されています。
かわいいですけどくれぐれも飼わないように気をつけてください。
もちろん拾うのも禁止です。




そろそろ四霊の麒麟に話を戻しますが、
麒麟は古代中国の伝説ですが現代の日常でもちょこちょこでてきます。

例えば、幼少から優秀な子のことを、「麒麟児」と言ったり、
麒麟のように足の速い馬のことを「騏驎」(鹿へんから馬へんになります。)と呼んだりします。
騏驎は、故事では一日に千里も走るすばらしい馬なんだとか。
ちなみに実際の麒麟は時速50~60kmで走ります。

また、ことわざで「騏驎も老いては駑馬(どば)に劣る」
(たとえ優れた人物でも老いて衰えると凡人にも敵わなくなる。)といいます。

これは中国戦国時代の書物「戦国策」からの一節で、
「騏驥之衰也 駑馬先之 孟賁之倦也 女子勝之」(騏驎の衰うるや、駑馬これに先んじ、孟賁の疲るるや、女子これに優る)が語源。


また、日本においても麒麟は様々な霊獣の中心的な存在として扱われ、多くの神社等で麒麟は祀られています。
戦国時代を終わらせて江戸幕府を開いた徳川家康は、王が仁のある政治を行うときに現れるとして麒麟を信仰し、日光東照宮には陽明門や拝殿などに麒麟の彫刻や絵画などの装飾を施しました。
また、太宰府天満宮でも、手水舎のそばに幕末の博多の商人たちが寄付した麒麟像が立ち、
東京都中央区の日本橋には、獅子像、松や榎木の浮き彫りなどの装飾とともに、東京の繁栄を象徴する麒麟像が施されているそうです。

そんな感じで、天下泰平を司る、やさしき獣の王。麒麟回でした。
ウチのブログにも麒麟が来て、生活が楽になったらいいなあと思います。

次回は同じく四霊の一角、羽を持つ生き物の長であり、
これまた縁起の良いレア生き物鳳凰を紹介します。
引き続き、今後ともよろしくおねがいします。




なお、このブログは、気になったことを調べ、学んだ内容とイラストを紹介するお絵描きブログです。
ソースは主にWikipediaなどになりますので、学術研究ではなくエンターテイメントとしてお楽しみください。
興味のきっかけや、ふんわりしたイメージ掴みのお手伝いになればうれしいです。

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